黄金の川の王さま の商品レビュー

ジョン・ラスキン(著者),富山太佳夫(編者),富山芳子(編者)

2009/10/04

「少し意外な作家の手になる童話を集めてみました」と編者は語る。ヴィクトリア時代のイギリスは「童話の黄金時代」と呼ばれ、実に多くの人々が童話を書いた。中でも、美術評論、労働者への講演などさまざまな活動を通し、「生活の芸術化」運動の布石を打った社会思想家、あのジョン・ラスキンが童話を書いていたとは！と驚かれる方もいるだろう。
　国じゅうが干上がってしまっても、そこだけは雨が降り、穀物はずっしりと穂を垂れ、牧草はたけ高く伸び、りんごは真っ赤に熟れ、ぶどうはみずみずしく実り、かおり高く味わい深いワインやとびきり甘い蜂蜜がとれるという…めぐみ豊かにあふれる谷間。その地で農家の３兄弟がとる行動により、物語は数奇な運命を辿り、いったんは危機にさらされた谷間は再び蘇る。
「自然とともに歩む幸せ」「手仕事の愉しみ」を謳い、農を基本とした理想郷を創ろうとしていたジョン・ラスキンが、自身の哲学をさりげなく散りばめた本童話は、彼が婚約者のために書き上げたものだそうだ。
　この他に、文豪チャールズ・ディケンズ、詩人画家エドワード・リア、小説家フォード・マックス・フォードの作品も収録。
「本当の豊かさとは？」「本当の幸せとは？」。ヴィクトリア時代の童話には、田舎暮らしへの誘い言葉が秘められている。（Ｓ）

2009/10/07

【妖精文庫】　全５冊
１　幸福な王子　オスカー・ワイルド
２　黄金の川の王さま　ジョン・ラスキン
３　ものぐさドラゴン　ケネス・グレアム
４　旅のマント　ダイナ・マライア・マロック・クレイク
５　軽いお姫さま　ジョージ・マクドナルド