精神病を知る本 の商品レビュー
精神科医の文章や心理…
精神科医の文章や心理テストについてなど、盛りだくさんな内容です。
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精神分裂病(統合失調症)をはじめとする精神疾患について、さまざまな論者が自由に論じた文章を一冊にまとめています。 精神病を患った経験のある元患者の座談会や、ロールシャッハ・テストに批判的な精神科医が、一人の作家のロールシャッハ・テストをおこなう企画、精神病患者の詩に対する作家の...
精神分裂病(統合失調症)をはじめとする精神疾患について、さまざまな論者が自由に論じた文章を一冊にまとめています。 精神病を患った経験のある元患者の座談会や、ロールシャッハ・テストに批判的な精神科医が、一人の作家のロールシャッハ・テストをおこなう企画、精神病患者の詩に対する作家の批評、さらに佐川一政や「皇太子成婚パレード投石事件」についての評論など、興味を引かれる記事があります。 民俗学者の赤坂憲雄の論文は、精神病に対する文化論的ないし権力論的な立場からの考察です。これに対して、精神科医の浅野誠へのインタビューは、医療として精神病にたずさわっている医者の立場からの見解が示されています。浅野へのインタビューは、記者が鋭い質問を投げかけ、それに対して浅野が明瞭な答えを返すという、非常に質の高い記事に仕上がっているように思いました。正常と異常のちがいをめぐってのやりとりでは、臨床の場面では経験的にはっきりと区別されることを強調し、苦しんでいながらそれを表現できずにいる患者を助けなければならないというモラルが精神医療の現場では要求されているということを説いています。こうした態度も、間違いなく「他者」へと向きあう「モラル」であり、社会の支配的なイデオロギーへの同化だとして安易に切り捨てることには、ある程度の慎重さが求められると、あらためて感じさせられました。
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