不滅 の商品レビュー
チェコの作家クンデラ…
チェコの作家クンデラの代表作です。アニェスと愛に貪欲な妹ローラ、文豪ゲーテと恋人ベッティーナ等、さまざまな女性たちが時空を超えて往きかい、存在の不滅、魂の永遠性を奏でる愛の物語です。文学的価値は高いと思います。クンデラの作品の中で一番好きです。
文庫OFF
5章以降、私のことかと思った 文章の連なりから受け取る感覚も、鋭い洞察も特別あるわけではないが、形式が持つ何かを感じた
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『存在の耐えられない軽さ』もそうだけど、男女の物語と哲学的なメタテキストが混然一体となって踊るような構成で、細部の言葉遣いを味わいつつも引っ掛からずに読める滑らかな文章で綴られている。その読書感覚は独特で、クンデラ以外では読んだことがない。現実世界と小説の境界を溶かそうとして敢え...
『存在の耐えられない軽さ』もそうだけど、男女の物語と哲学的なメタテキストが混然一体となって踊るような構成で、細部の言葉遣いを味わいつつも引っ掛からずに読める滑らかな文章で綴られている。その読書感覚は独特で、クンデラ以外では読んだことがない。現実世界と小説の境界を溶かそうとして敢え無く現実世界に呑み込まれてしまうような切なさを感じる。
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とりあえず一読。 安易に整理をつけようとすると、作者から嗤われそう。 もう何周か読んできちんと書きたい。
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まさに自由奔放 時間は真っ直ぐ進まなく、現実/虚構の区別も曖昧。 けれども、それぞれの「エピソード」が、複数の主題と結びついていき、壮大な人生の小説となる。 ■「不滅」「顔」「イメージ」 2020年代現在、当時よりもより一層、(一般市民の)私たちにとって身近に潜むテーマなのでは...
まさに自由奔放 時間は真っ直ぐ進まなく、現実/虚構の区別も曖昧。 けれども、それぞれの「エピソード」が、複数の主題と結びついていき、壮大な人生の小説となる。 ■「不滅」「顔」「イメージ」 2020年代現在、当時よりもより一層、(一般市民の)私たちにとって身近に潜むテーマなのではないか。 私たちは片手一つに収まる電脳世界の中で、ほぼ四六時中イメージの生成に勤しんでいるし、さらにそれを不滅の世界にいとも簡単に残せてしまう。 そして、あまりにも多い顔たち……。 ■アニュスが意図もせず、死によって他者の中にあるイメージを強く刺戟したことを考えると、 きっと私たちは不滅にならざるを得ないのだと思う。殊に現在……。 ■私たちは定められた主題に沿って、生きている。喜劇的な存在である。 主題と関係がないエピソードは積み重なっていくが、これは謂わば地雷みたいなもので、何かの折に強く私の気持ちを揺さぶる可能性がある。 ■記憶は映画的ではなく、写真的である。
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※このレビューにはネタバレを含みます
最初のうちは面白く読んでいて、付箋なんかもつけたりしたのだけれど、半分も読み進まないうちに何を読まされているのかわからなくなる。 今は誰の話を、なんの話を、いつの話を読んでいるのか? 物語の大半は理解できないうちに零れ落ちてしまったけれど、なんとか少しでも掬い取れたらいいのだが。 ふと見かけた見知らぬ女性の、軽やかにひるがえる手の動きを見て心を惹かれた私は、その女性にアニェスと名付けて、彼女の家族とその関係性について思いを馳せる(妄想する)。 アニェスの母は、家族や友人たちに囲まれて生きることに喜びを感じる人だったが、アニェスの父や彼女は、人と離れて生きることに安心を覚えるタイプだった。 ”彼女が求めていたのは、彼らがときどき便りをよこして、身辺に厄介なことはなにも起っていないと請け合ってくれることだけだった。それはまさしく言いあらわしにくく、説明しにくいことだった。彼らに会いたいとも一緒に暮らしたいとも望んでいないのに、彼らが元気でいるかどうか知りたいという彼女の欲求は。” 序盤に出てくるこの文章、「わかるわ~」と思った。 アニェスが夫や娘に対して、一緒に暮らしたいと思わないけれど、元気かどうかは知りたいと思うこと。 でも、私がいつでも同居できる状態での別居を求めているのに対して、アニェスは最後まで同居を望まない。 望まないのに別れることができなかった不幸。不幸? アニェスは別に不幸ではなかったな。幸せでもなかったかもしれないけれど。 そして、姉の生活に容赦なく入り込んできては振り回す妹のローラ。 彼女のエキセントリックなほどのかまってちゃん言動は、読んでいるだけでしんどい。苦手だ。 不滅。 不老不死とはまた違う。 体は死んでも思いは残るとか、作品が残るとか、思想が残るとか、生きてきた証が残れば、その人の存在は不滅なのかもしれない。 偉人だけではなく、今ならSNS上に、永遠に顔や姿が、発言が消えることなく残されてしまう。 この作品が発表されたときはアルバムの写真の中だったけれど。 ”あたしが子どものころ、誰かの写真を撮りたいと思うときには、かならずその人に承諾を求めたものだったわ。(中略)そのうち、いつか、誰もなにも頼まなくなった。カメラの権利はあらゆる権利の上のほうへと高められて、そして、その日からすべてが変わってしまったのよ、完全にすべてが” ”ジャーナリストの力は質問をする権利にもとづくのではなく、答えを強要する権利にもとづくのだ” 30年前の作品とは思えないほど、今の社会にも当てはまる。 というより、30年前よりも、今だ。 アニェスに関する私の妄想部分はまだしも、ゲーテと彼の恋人たちの話や、ゲーテとヘミングウェイの対話、ルーベンスの恋愛事情と、どんどん話は難解に、構造は複雑に、そこにまたアニェスやローラやポール(アニェスの夫)の人生も絡み合って、もう何が何やら。 作者のミラン・クンデラはチェコの作家なのだけど、フランスの作家の小説を読んでいる気がしてしょうがなかった。 多分それは、思想のど真ん中に恋愛や性愛や宗教の愛が動かしようもなく存在しているからなんだろうと思う。 苦手なのだ、そういう作品。 だからそういうものに囚われまいとするアニェスのパートが好きなのかもしれない。 最後のほうに出てくる「リュートひき」は、てっきりローラだと思ったんだけど、アニェスだった。 言われてみれば、アニェス以外の誰でもないとわかるのだけど、サングラスに騙されたよね。 やれやれ。 ”彼は死に対する戦闘と、生にたいする闘いのことを語る……「闘い」という単語が、短い演説のあいだに五度繰りかえされ、我が昔の祖国プラハを私に思いおこさせてくれる、赤旗、ポスター、幸福のための闘い、正義のための闘い、未来のための闘い、平和のための闘い。万人による万人の破滅にまで至る平和のための闘いと、チェコの民衆の智慧はそう付けくわえるのを忘れなかったけれど。” これもまた多分に現在。 チェコではなくウクライナで。 万人による万人の破滅にまで至る平和のための闘い。 経験者の語る、これほどに深く真実をえぐるような言葉があるだろうか。 だがこの作品のテーマは〈不滅〉なんだな。 ああ、とてつもなく理解が遠い。
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今までの小説とは異なり、著名な芸術家の部分的なストーリーである。ゲーテ、ブリューゲル、モーツァルトなどヨーロッパの芸術家が軒並み登場する。チェコの情勢は殆ど書かれない。 芸術家の人となりを簡単に知るにはいい本であろう。
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長そうに見えて章立てが細かいのでそうでもない。 現実と妄想の話が交差したり、まったく誰とも関わらないキャラクターがいきなり出てくるのがおもしろかった。 これが最高傑作と言われていることに納得はいかない、わたしは生は彼方にがすきだ
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キッチュKitsch のことを頭の片隅に置きながら読んだけど、やはりここにもそのテーマが存在してた。 死後、私たちの人生は美的な嘘によって語られる 有る事無い事言われても 死んでるから自分にはもうどうしようもない 本当の真実は永遠に語られない 真実な生はその肉体の死と共に滅び...
キッチュKitsch のことを頭の片隅に置きながら読んだけど、やはりここにもそのテーマが存在してた。 死後、私たちの人生は美的な嘘によって語られる 有る事無い事言われても 死んでるから自分にはもうどうしようもない 本当の真実は永遠に語られない 真実な生はその肉体の死と共に滅びるけど、死後美的に飾られた自らの人生は"不滅"。その事への恐怖。 クンデラはどうしてこうも 真実にこだわるのかなあ きっとあの時代に、たくさんの悲しい嘘、怒りたくなるような嘘、空虚な嘘を見てきたんだろうな
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※このレビューにはネタバレを含みます
作中で、作者はエピソード(エピゾード)のとるにたらなさを語っている。だけれど、本作で伝えられているのはそのエピソードの威力にほかならない。私たちの存在を支え、他者に印象を与え、思い出させるのはエピソードであって、私たち個人そのものではない。 キャラクターの魅力でいうと、ファザコン極めたアニェスの高潔さが好きだし、ヒステリックで自己愛が過ぎる(でも、自分に自信がない)ローラの身勝手さには苛々する。ポールの空しい若さ崇拝や半分意識的な無神経さにも。 でも、最後にアニェスの仕草でポールをつなぎ止めるローラや、その仕草を嬉しがるポールには、スカッとするような可哀相になるような、不思議な気持ちがした。「シャボン玉の中へは庭は入れません まわりをくるくる廻っています。」という詩があって、アニェスに対するローラとポールの関係には、そんなイメージが似合う。 でもさぁべつに、アニェスは自分の仕草を覚えていられようが、どうでもよかったし、むしろ、記憶に残るのが嫌だったんだよね。お父ちゃんのように生きて死にたいっていう気持ちにとりつかれた変な女だったわけで・・・だけど、なんでかそんなこと忘れて、夫子供捨てて好きなことしてるアニェスかっけーって思っちゃう。 だから「不滅」は、そこに収められたたくさんのエピソードを以て、不滅の恐ろしさと輝き、翻って、忘れられることの価値も伝えている・・・、気がする。 あと、作者が女の子の身につける、今でいうワイドパンツ?やカジュアルな服装を憎みに憎み抜いていて笑った。
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