わがままな食卓 の商品レビュー

沢野ひとし(著者)

2010/08/17

　旅と食べ物を巡るエッセイである。旅の話も食べ物の話もとてもよくわかる。特に中心となる食べ物の話は、すぐに走ってそれを食べに行きたいって感じがする。とても酒が好きで、しかも昼間から日本酒をしみじみと飲むような感じがいい。こういう食に関するエッセイは、自分と好みが合うかどうかがとても問題だと思うのだけど、卓上コンロで豆腐だけの湯豆腐を食べている感じや、鰻を食べに行く様子、３食続けて寿司を食べて当たり前みたいな感じ、飲み屋ではなく食堂で飲む雰囲気、とても心がひかれる。こんなふうに食べたいなと思う。
　一方でところどころ出てくる男女関係の話はいただけなかった。平たく言えば不倫の話なんだけど、アクセントになっているようには読めなかった。せっかく楽しく飲み交わせそうな相手なのに、ある一点で友達になれないような、寂しい気持ちがした。