留岡幸助と感化教育 の商品レビュー

田沢薫(著者)

2011/12/12

現競争社会をそのままにして教育程度を一律に上げれば解決する問題どころか
更に高い教育を目指して競争と支配と悲壮感を激しくしていくことでしかないと思う

教育現場の効率を良くしようとして大きな場所に多くを収容しすぎると
互いの心の疎通が取れなくなって疑いを発生し相手を仲間と思えなくなって
敵として認識するようになる
大事なのはルールによる規律で無く
参加するお互いの視野あるいは意識の大きさに合わせた
心と心で通じ合える目と目で語れる信頼に満たされた家族的環境である

ルールによる規律の中での教育は利己主義を育ててしまいやすく
不安と恐怖を生み出し裏表ができて抜け駆けや蹴落としが蔓延してしまい
個々が自律した心を育む事ができなくなると思う

従って修正的な繕いで基本的な違いを隠し通すこともできないし
本質的に改革していく道に載せることもできずに
解決の糸を複雑に見えにくくしてしまって争いによって
差別や格差を大きくして人身を迷わせてしまうのが落ちである

餌としての物質が有り余る事は活きるベースである環境を残飯で腐敗させて
息苦しくさせるだけでしかなく
益々競争を激しくする殺伐とした空気は透明度を下げて見晴らしを悪くし
恐怖を助長しパニックを引き起こさせることになるだろう

留岡の実践を個別に見れば大きな成果に見えるけれども
時空間のスケールで見据えると在らぬ方に瞑想している様を見ることに成るだろう
家庭崩壊や見えないゲリラ的な適や嘘だらけの広告メディアの今の現実を見れば
否が応でもその結果が氾濫していることに気付かされるだろう

勿論留岡によって救われた人々が膨大である事は確かな事であるし
その業績はすばらしい事だと言う事には違いないのだけれど
この路線で彼が描いたパラダイスに至ることは無いだろう
この長い経験を活かして初心に戻り
システムではなく心をベースにした社会環境を目指して
根本的に姿勢を創ることから始めなおさなければならないだろう

さてこの本では、世界中で体罰に対する疑問と反省が１９世紀に起こっていたと言う事実と、それが人権的配慮からでなく、むしろ税金の無駄を省くための方法として始まっていたことにも驚きを覚えると共に強欲の根の深さを痛切に知る手掛かりとなった
体罰では更生に向かわせることなど無理で、税金の浪費でしかない事に気付く
実験によって非行に走ってしまった児童を独立自営に向かわせるには、体罰やいじめで無く教育が必要であると言う結果を得る
ここで言う独立自営とは生活力と共に自分を知ることで心を開き自律心を育てる事なのだろう

この本によって1900年ごろの人々が、利害に反する者に対して恐怖を与えて押さえ付ける監獄制度を改めて、むしろ信頼でつながる家庭的な環境と心の通う教育によって、自分を自覚して独立自営できる力を育てることを目指した事実を知ることができた
庶民が反面教師となる支配社会の発展を前にして、より良いパラダイスを求めて冒険し続けて来た事の確信を与えてくれた