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生命の風物語 の商品レビュー

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2023/01/27

読み始めはモヤモヤするのだが、読んで行くうちに、そのモヤつきを越える分岐点がくる。これがこの本を読む醍醐味だと思う。 己の価値判断には関係なく、圧倒的に異なる生の営みがこの世に存在するのだという納得。それが降りてくる瞬間は不思議な爽快感がある。言ってみれば生命の風が吹いてくるの...

読み始めはモヤモヤするのだが、読んで行くうちに、そのモヤつきを越える分岐点がくる。これがこの本を読む醍醐味だと思う。 己の価値判断には関係なく、圧倒的に異なる生の営みがこの世に存在するのだという納得。それが降りてくる瞬間は不思議な爽快感がある。言ってみれば生命の風が吹いてくるのだ。そして、自分の心の中には、確かに、他者に触れることで自由になれ、生き返る部分があるのを知る。 不条理で、残酷で、真摯で生き生きとした世界の気配に驚愕しつつも同時に魅了され、目が覚めるように感じる感覚。これは異国の地を歩む旅人の感覚ではないかと思う。著者がたどった実人生の旅路をも感じさせる文章だ。物語の細部に経験にもとづいたリアリティが宿っている。 表紙の裏には著者によるアフガニスタン周辺の手描き地図が印刷されていて、物語に命を吹き込む助けになっている。本文の青いインクも、挿絵も、写真も、脚注も、装丁もふくめてトータルで異文化が味えるようになっていた。 おかげで、知らない街をあれこれ歩き回るように、本のなかでぶらぶらしたり、びっくりしたり、ボンヤリできた。電子書籍ではとても再現できない、異国の風をとじこめた宝箱のような素晴らしい一冊と言えるだろう。読み終えるのがもったいなくて仕方なかった。良い本です。 アフガニスタンが大変そうなのは、薄ぼんやりとしか認識していなかったが、コレを読みながら、もう歴史レベルでずっと大変なんだなと思った。大変さの単純化もできない。自分がいかに温室育ちかを考え、今の時代の日本だから生き残れているようなものだとため息が出た。もちろん色々問題はあるにしろ、とりあえず天然痘は根絶しているし、福祉はあるし、女は部屋の隅で縮こまってろとは言われないし、女子にも教育の機会をと主張しただけで撃たれない。

Posted byブクログ