運命 の商品レビュー
中国明朝の建文帝と永楽帝を描いた歴史小説。靖難の役(靖難の変)は明朝初期に燕王が建文帝に対して起こした内戦で、勝利した燕王が永楽帝となった。靖難は「君難を靖んじる」という燕王側の主張であり、君側の奸を除くという大義名分だった。結果は権力の簒奪であるが、最初は建文帝側が諸王の勢力を...
中国明朝の建文帝と永楽帝を描いた歴史小説。靖難の役(靖難の変)は明朝初期に燕王が建文帝に対して起こした内戦で、勝利した燕王が永楽帝となった。靖難は「君難を靖んじる」という燕王側の主張であり、君側の奸を除くという大義名分だった。結果は権力の簒奪であるが、最初は建文帝側が諸王の勢力を削ぐために、冤罪で諸王を削藩し、庶民に落としたり、自殺に追い込んだりした。これが問題であった。 「天下は一人の天下にあらず乃ち天下の天下なり」との感覚からは永楽帝が皇帝になることは自然に感じる。しかし、永楽帝を謀反人とする反感は思った以上に大きかった。永楽帝も自分に仕えない学者の弟子や一族を順々に皆殺しにする残酷なことをしている。一方で、永楽帝を簒奪者とする反感は、個人への評価だけでなく、中国の北と南の地域のギャップもあるだろう。北の地域代表に対する南の反発がある。 永楽帝の評価できることは以下がある。「永楽帝の一生で、庶民からとりたてる税金が増税されたことは一度もない」(205頁)。歴史上の為政者の評価では「戦争に勝利した」「新しい制度を導入した」「建造物を建てた」などが語られがちである。しかし、消費者感覚では「増税しなかった」という評価項目を重視したい。
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久しぶりに田中芳樹さんの作品を読ませて頂きました。 最近は、もっぱら童門冬二さんの作品ばかりだったので、純粋な歴史小説も久しぶりで、一気に読んでしまった。 時代は、中国の明の時代で、二人の皇帝の話で、叔父が、甥っ子を追い落として皇帝の座につき、甥っ子は、僧侶として、各地を、放浪す...
久しぶりに田中芳樹さんの作品を読ませて頂きました。 最近は、もっぱら童門冬二さんの作品ばかりだったので、純粋な歴史小説も久しぶりで、一気に読んでしまった。 時代は、中国の明の時代で、二人の皇帝の話で、叔父が、甥っ子を追い落として皇帝の座につき、甥っ子は、僧侶として、各地を、放浪する話で、歴史に名高い鄭和も登場します。 鄭和は、名前は、知ってましたが、まさか宦官だったとは、驚きでした。 テンポよくサクサク読める内容です。
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原作は幸田露伴。中国史、明の時代の二人の皇帝、建文帝と叔父の燕王にまつわる「靖難の役」の史伝。幸田露伴は小説に見切りをつけ、このような史伝や文学論を展開していったが、この「運命」が1919年に発表されたときは大層評判になったという。恥ずかしながら原作は読んでいない。だからこそ、田...
原作は幸田露伴。中国史、明の時代の二人の皇帝、建文帝と叔父の燕王にまつわる「靖難の役」の史伝。幸田露伴は小説に見切りをつけ、このような史伝や文学論を展開していったが、この「運命」が1919年に発表されたときは大層評判になったという。恥ずかしながら原作は読んでいない。だからこそ、田中芳樹によるリメイクはおもしろく、あっという間に読み終えてしまった。もっとも露伴の文語体の原作を果たして読めたかどうかは大いに疑問ではある。
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H.20.12.4.SBF.391 1999年3月20日、初、並、帯無 2017年1月6日、伊勢BF
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