神々の乱心(上) の商品レビュー
最後の作品
未完結に終わった大作。巨匠、最後の作品です。連続殺人、新興宗教、麻薬密売……昭和初期、日本の情景を濃厚に描いた力作。いくつかの謎は明かされないままですが、想像する楽しみが広がります。
やま
昭和8年、東京近郊・梅広町の「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。月辰会研究会をマークする特高課第一係長・吉屋謙介が事件を追う。
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「松本清張」の長篇歴史ミステリー作品で最後の小説となった『神々の乱心』を読みました。 『失踪 ―松本清張初文庫化作品集〈1〉』、『月光 ―松本清張初文庫化作品集〈4〉』、『十万分の一の偶然』に続き「松本清張」作品です。 -----story------------- 〈上〉 ...
「松本清張」の長篇歴史ミステリー作品で最後の小説となった『神々の乱心』を読みました。 『失踪 ―松本清張初文庫化作品集〈1〉』、『月光 ―松本清張初文庫化作品集〈4〉』、『十万分の一の偶然』に続き「松本清張」作品です。 -----story------------- 〈上〉 昭和8年。 東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。 特高課第一係長「吉屋謙介」は、自責の念と不審から調査を開始する。 同じころ、華族の次男坊「萩園泰之」は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。 ―昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。 〈下〉 昭和8年の暮れ、渡良瀬遊水池から他殺体があがった。 そして、もう一体。 連続殺人事件と新興宗教「月辰会研究所」との関わりを追う特高係長「吉屋謙介」と、信徒の高級女官を姉に持つ「萩園泰之」。 「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か? 背後に蠢く「大連阿片事件」関係者たちの思惑は? 物語は大正時代の満洲へと遡る。 未完の大作。 ----------------------- 上下巻を合わせると900ページ余りで時間、空間、テーマともにスケールが大きな作品… 久しぶりの大作でしたね。 時代が大正末期から昭和初期で、当時の行政機構(特に警察や軍、宮中関係組織)がキチンと理解できていないことや、日常において興味の薄い新興宗教がテーマになっていること、知識がほとんどない神事や考古学に関する内容が次々に出てくることから、なかなか内容が理解できず読み進むのに時間がかかりましたねぇ。 大正末期の中国大陸での大連阿片事件や、謎の男「横倉健児」が新興宗教を興そうと企むエピソード、、、 時代は昭和初期に移り、新興宗教「月辰会研究所」と宮中の関係、女官「北村幸子」の自殺、大連阿片事件関係者の殺害事件、、、 それぞれ、別な立場や視点から真実に近づこうとして活動する特高警察警部「吉屋謙介」と公家の「萩園泰之」、、、 序盤~中盤で提示された数々のエピソード、事件や謎に関する絡み合った糸が少しずつ解けはじめたところで… 突然、物語は終わってしまいます。 う~ん、残念… 「松本清張」も書き切りたかったんでしょうが、残念ながら未完のまま召されてしまったそうです。 しかし、巻末に編集部が生前の著者から聞いていた内容から結末を想像する手掛かりが示されており、概ね、結末が想像できる内容になっていたので、モヤモヤは減少しましたけどね。 でも、できることから「松本清張」の手で描かれた結末を読みたかったですねぇ。 以下、主な登場人物です。 「吉屋謙介」 埼玉県特高警察の警部。 普段の拠点は浦和町の県警察部。 月辰会に関わる怪事件を捜査する。 「萩園泰之」 藤原不比等を祖とする子爵・萩園泰光の弟。 吉屋警部とともに本作の探偵役となる。 青山に住み、「華次倶楽部」という公家次男の親睦団体を結成している。 「萩園彰子(深町女官・深町掌侍)」 萩園泰之の姉。 皇宮御内儀に奉仕している。 「深町」は宮中での源氏名。 「伏小路為良」 華次倶楽部の会員で、萩園泰之と親しい。 華族内での情報通。 「北村幸子」 深町女官・萩園彰子の部屋子であり、使いとして月辰会に出入りしていたが、吉野川に謎の投身自殺を遂げる。 「北村久亮」 北村幸子の父。 吉野町の倉内坐春日神社の宮司。 「北村友一」 北村幸子の弟。 春日神社の禰宜。 「大島常一」 埼玉県特高警察課長。 吉屋警部の上司。 「足利千代子(喜連川典侍)」 室町幕府古河公方の末裔。 41年間宮中に出仕したのち、栃木県の佐野に隠棲している。 71歳。
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だいぶ長い間かかってしまったけれど、松本清張が皇室(の周辺)を扱った未完の大作。読み進めるにつれて未完ということが残念でならないけれど、致し方ない。 新興宗教に関わる皇室で働く女官の自死に始まり、その謎を華族に連なる萩園と、特高の吉屋が追う。双方がお互いを警戒しあっている関係性、...
だいぶ長い間かかってしまったけれど、松本清張が皇室(の周辺)を扱った未完の大作。読み進めるにつれて未完ということが残念でならないけれど、致し方ない。 新興宗教に関わる皇室で働く女官の自死に始まり、その謎を華族に連なる萩園と、特高の吉屋が追う。双方がお互いを警戒しあっている関係性、皇室というタブーに関わること、その皇室と新興宗教の関係の怪しさ、満州における阿片の不正事件、天皇陵の盗掘、そして大戦を前にした昭和初期という緊張感がこの小説の雰囲気を盛り上げる。 小説ではあるけど、昭和初期は日本がアジアの盟主(批判はあるだろうけど)であったことも特に満州を巡る記述や人々の凛とした佇まいから感じられる。現代日本は過去を誇りに思いつつうちに閉じこもる国という感じだけど、この頃は視点が国際的だ。まあ、この小説を読んでこんなことを考える人は少ないと思うので、かなり個人的な感想ではある。 未完とはいえ、後半が楽しみだ。
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松本清張を代表する作品かつ未完の作品。評価は高いようだが、個人的には上巻を読み終わった段階では、今ひとつという感想。遅々としてストーリーは、展開しない。進んだかと思えば、再度の確認と懐古。古墳時代や青銅器、鏡、当時の特高の内部文書や満州国でのアヘン取引に関わる関東軍と政治資金に絡...
松本清張を代表する作品かつ未完の作品。評価は高いようだが、個人的には上巻を読み終わった段階では、今ひとつという感想。遅々としてストーリーは、展開しない。進んだかと思えば、再度の確認と懐古。古墳時代や青銅器、鏡、当時の特高の内部文書や満州国でのアヘン取引に関わる関東軍と政治資金に絡む当時の政権の裏事情等。 下巻で、どう事件の真相と結びついていくのか、あるいは結び付かずに未完なのか?
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
埼玉県特高課係長の吉屋は、月辰会研究所に目を留めた。宗教団体だろうか?天理研究会事件を思い出したからだ。案内の警察署長は宗教団体ではなく、占いをしているようだという。東京方面から自動車で来る人もいるとか。しばらく様子を窺っていたら、その研究所に呼ばれたタクシーに女性が乗って出てきた。駅前でその女性に会のことを尋ねようとしたが、拒否され、仕方なく警察署まで同行してもらったが、名前は言うがどうしても身分を明かさない。無理を言うと包みを抱えて離さない。無理にその包みを取り、中を覗いて驚いた。「深町女官殿」と記された封書が出てきた。そして、バックからは「宮内省皇后宮職」職員「北村幸子」という名刺が出てきた。驚いた吉屋と署長は彼女に謝って引き取ってもらった。その後しばらくしてから、北村幸子が宮城を辞め、吉野の田舎に戻ってすぐに吉野川に入水自殺をしたと知った。なぜ彼女は自殺したのか、自分の強引な訊問が影響しているのか、それを突き止めたい気持ちにかられる吉屋であった。
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「100分de名著」を見て気になってたので読んでみました。皇室のタブーのようなことを小説の題材にするって、よく許されたなと思います。 話が月辰会と女官の自殺からかなり離れていっているようで、これがどう繋がっていくのか。 説明が長いような感じもあり、読み進めるのに多少飽きがくるとこ...
「100分de名著」を見て気になってたので読んでみました。皇室のタブーのようなことを小説の題材にするって、よく許されたなと思います。 話が月辰会と女官の自殺からかなり離れていっているようで、これがどう繋がっていくのか。 説明が長いような感じもあり、読み進めるのに多少飽きがくるところもありましたが、だからといって読みづらさはありません。推理小説というより、戦前の時代記を読んでる感じです。 下巻、これから一気に物語は進むのでしょうか。
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やや思いテーマだが、上手く小説の種としてまとまっていた。 時代背景が難しいのと、連載ものとが会いまって、説明調がややくどい。 絶筆になってしまったのが残念です。
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松本清張の未完の大作。新興宗教団体と皇室がつながるなんていう要素におなかいっぱいになりそうです。紋様の意味や神道系新宗教のことなど、ちょっぴり京極夏彦な感じも覚えた。
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舞台は昭和初期の日本。中国・満州のエピソードも出てきます。新興宗教、阿片関連の事件も関係してきて複雑な人間関係がしだいに明らかになっていきます。 でも私にとってはなじみのない漢字が多く、とっても読みにくく進まない!結構流し読みしてしまいました。 おもしろいところは、二人の人間が個...
舞台は昭和初期の日本。中国・満州のエピソードも出てきます。新興宗教、阿片関連の事件も関係してきて複雑な人間関係がしだいに明らかになっていきます。 でも私にとってはなじみのない漢字が多く、とっても読みにくく進まない!結構流し読みしてしまいました。 おもしろいところは、二人の人間が個別に捜査を進めていくところ。全く関係のなかった二人が、偶然出会って駆け引きをしたり、でも協力はしない、この二人から得られる情報を紡ぎ合わせて一本にしていくのがとても楽しい。
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