総合介護条例のつくり方 の商品レビュー
本書は、地方分権改革による「みんなで条例をつくる時代」の到来という認識の下、専門的な知識や技術が必要な「既存の法体系との整合性」のチェックについて、国会の法制局でつちかわれた職業的熟練が役に立つのではないかという視点から、市民・議員・職員のパートナーシップによる条例づくりの活動を...
本書は、地方分権改革による「みんなで条例をつくる時代」の到来という認識の下、専門的な知識や技術が必要な「既存の法体系との整合性」のチェックについて、国会の法制局でつちかわれた職業的熟練が役に立つのではないかという視点から、市民・議員・職員のパートナーシップによる条例づくりの活動を広げる試みとして、議院法制局での立法補佐活動経験者がアドバイザー役となり、1999年に開始された「市民法制局準備会」における「総合介護条例ワークショップ」の取組についてまとめたものである。 「総合介護条例ワークショップ」は、介護保険法施行に当たって市町村がどこまで豊かな条例を構想できるかをテーマとしたもので、その成果物として、介護保険法を包み込んで、市民本位の介護のための条例を目指した「総合介護条例案」と、法施行のために必要不可欠な内容を基本とし、そこに基本理念や介護保険運営協議会など新しい工夫を若干盛り込んだ「介護保険条例案」という2つが発表された。その過程では、100名を超える市民・自治体職員・議員が、6週間にわたって、熱のこもった真剣かつ活発な議論をかわしあったという。本書では、その成果物の内容や議論の過程を丁寧に紹介している。 これまで官僚や議院法制局職員による職人技・伝統芸能と化していた「政策の法制化(条例化)」のノウハウを市民に開放していこうという「市民法制局」の試みは、この地方分権、住民との協働の時代にあって、高く評価されるべきものであると感じた。 本書の白眉は、「○○市総合介護条例案」の逐条解説部分である。ワークショップで出された複数の意見も紹介されているので、どのような考え方や議論のうえに条文がつくられたかがわかるようになっている。まさに条例づくりに当たっての、山本五十六のいう「やってみせ」となっており、介護関係にかかわらず、条例づくりについての具体的なイメージを持てるような内容となっている。 衆議院法制局の橘氏による「『条例をつくる』ということ」というパートも、条例づくりに当たってのポイントが的確に解説されており、条例づくりに携わる者にとって役に立つだろう。
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