双頭の鷲 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
佐藤さんの歴史小説の読みやすさは異常。二段だしページ数もけして少なくはないのですが、もう読まされるといっていいぐらい、ページを捲る手が止まりません。 まず、キャラクターの魅力がすごい。主人公のデュ・ゲグラン、うんこで遊んじゃったりするぐらい下品で図体がでかい子供のような人なのですが、戦の天才で、采配を震わせたら負け知らず! 幼い頃に受けた予言によって、フランスの賢王シャルルとタッグを組んだら向かうところ敵なし! ずずずいと出生街道をひたはしります。しかし、破竹の勢いで伸し上がっていくデュ・ゲグランですが……もちろん、一筋縄では行かぬ部分もあり。その、人生楽ありゃ苦もあるさ的なストーリー展開が凄い好きだなぁ。無常っぽさが。そのゲグラン、ぜんぜん見目麗しくはないのですが、読みすすめればすすめるほど魅了されちゃうんだよね。リアルで何回噴いたことか。作中に従兄弟のエマヌエルの、彼に対する描写があったのですが、まさにこれこそ! と思ったので引用。 目に眩いばかりの天才と、いびつな弱さを武器にして、自分に厳しい人の心を、たちまち虜にしてしまう。あげく、命の尽き果てるまで献身させ、くたびれた人生は捨てて振りかえることも無い。 ——無邪気にもほどがある。 これですよ。天才ぶりと無邪気さで相手を魅了し、献身させ、最後にポイするという酷い子供。しかも悪気無しときたものだ。これは酷い、が読んでもらえたらすごく気持わかると思う。可愛げがあるんだこれが。個人的にはいとこのエマヌエルがお気に入りのキャラクターで、ストイック+オカン属性。 傭兵ピエールよりも、群像的な要素が強いかなと思ったのですが、それぞれのキャラクターが独立し、肉を伴っており、すごい魅力的だった。すんばらしい。 そして、キャラクターの魅力もさることながら、緻密に描写されたヨーロッパの文化や歴史、戦争などに引き込まれます。魅力的なキャラクター、がっちりとした世界観、血沸き肉踊るストーリー。大満足でした。ヨーロッパの戦記物好きな人はぜひぜひ。
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この人の本は読み始まるまではなぜか時間がかかりますが、読み始めたら一気に読んでしまう。 王様シャルルの覚醒するさまやベルトランの破天荒さ以上にエマヌエルの苦労人っぷりに目を奪われます。
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フランスといえばマリー・アントワネットに代表される絶対中央集権国家のイメージが強いと思いますが、これはそうなる前、つまりフランスがかなり地方ごとに分裂し、イギリスと領土を取り合ったりしていた頃の話です。ジャンヌ・ダルクと多少時代がかぶります。そして、フランスの王権を強くし、後の絶...
フランスといえばマリー・アントワネットに代表される絶対中央集権国家のイメージが強いと思いますが、これはそうなる前、つまりフランスがかなり地方ごとに分裂し、イギリスと領土を取り合ったりしていた頃の話です。ジャンヌ・ダルクと多少時代がかぶります。そして、フランスの王権を強くし、後の絶対君主国家に導いた、その立役者がまさにこの話の主役、デュ・ゲクラン。人間的にはてんで子供。醜男だけど憎めず、戦争だけが取り柄の彼がシャルル5世という主君を得て元帥にまで上り詰める話。読み終わった後、ちょっとしたカタルシスがあります。本当にごくろうさま、安らかに眠ってねと言ってあげたくなる。こういう言い方はどうかと思いますが、デュ・ゲクランという人は、すごく「かわいい」のです。まるで永遠の子供のような。
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