裸足と貝殻 の商品レビュー
三木卓の自伝小説。 敗戦とともに満州から引き揚げてきた一家の末っ子を主人公に書かれている。 当時を生きた人なら、懐かしいだろう流行りの歌、文学、出来事。 しかし当時を知らなくても戦後の一般庶民の暮らしや三木卓という作家がどのようにして出来上がったのか知るのは面白かった。 小児麻痺...
三木卓の自伝小説。 敗戦とともに満州から引き揚げてきた一家の末っ子を主人公に書かれている。 当時を生きた人なら、懐かしいだろう流行りの歌、文学、出来事。 しかし当時を知らなくても戦後の一般庶民の暮らしや三木卓という作家がどのようにして出来上がったのか知るのは面白かった。 小児麻痺の後遺症で片足が不自由で気後れしがちな主人公だけでなく、夫を亡くし、女手一つで息子たちと父を養った母、母を助けるため頭はいいのに学業に専念できない兄、捨てた子に養われる屈辱に耐える祖父、学友、教師、それぞれの人物をきちんと描いている。 若い人にも読んでもらいたい、まっとうな文学だと思う。 こういうのをいまどきの中高生も読めばいいのにな・・・。
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物語の始まりと終わりが、ものすごくいい。 目の前に広がる風景、出会うであろう人々、そこへと進み続けるであろう主人公の姿。そこに心が触れることで、無限に大海原に波が広がっていくように、物語は繋がっていく。始まりも終わりも無いように。 終戦後間もなく、大陸から日本へと引き揚げ...
物語の始まりと終わりが、ものすごくいい。 目の前に広がる風景、出会うであろう人々、そこへと進み続けるであろう主人公の姿。そこに心が触れることで、無限に大海原に波が広がっていくように、物語は繋がっていく。始まりも終わりも無いように。 終戦後間もなく、大陸から日本へと引き揚げてきた少年。思春期というには幼く、幼年期というには分別がついている世代。自分なりの価値観に拘りながら、劣等感にさいなまれながら、激動の時代を生きて行く、ひとつひとつの振る舞いが瑞々しい。端正な史実の描写とともに、読む者の心に少年期の人生が眩しく感じられた。 読み終わったあと、ふと自分の少年期を振り返り、今へと続いて生きた道程を、主人公の未来に重ねてみて、力をもらった気分になる。そんな小説。
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