文章教室 の商品レビュー
金井美恵子さんの描写…
金井美恵子さんの描写力はすさまじく、私たちの実生活をそのまま言葉だけで表現されています。かっこを使わないのに、今のは誰のセリフかすんなりわかることも、彼女の描写力・言葉の使い方の卓越に依るのだと思います。ともかく、執拗な程に言葉にこだわった、とても美しい、リアルで、でも「言葉」な...
金井美恵子さんの描写力はすさまじく、私たちの実生活をそのまま言葉だけで表現されています。かっこを使わないのに、今のは誰のセリフかすんなりわかることも、彼女の描写力・言葉の使い方の卓越に依るのだと思います。ともかく、執拗な程に言葉にこだわった、とても美しい、リアルで、でも「言葉」な故にまた幻想的な色もあって、金井美恵子ファンならついにんまりしてしまうでしょう。文学好きな方は、是非。
文庫OFF
著者自身をまるで反映しない登場人物たち。 エッセイもそうだけど、全ては皮肉なのだ。 なのに読んでしまう、あー面白いくすくす、と思いながら。 あちらこちらの仕掛けを理解することは、まるでできないんだけど、こんな浅薄な読者でも許してもらえるだろうか?
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色々な楽しみ方がある本だと思う。風俗小説として読むと、人々の思惑が交差しあう様子や人々の持つ心の空虚などに共感や苛立ちを覚えることができて楽しかった。また、本作は地の文と主人公の日記からの引用文、作中の現役作家の著作や実際に存在するだろう書籍からの引用文とを繋ぎ合わせてできた小...
色々な楽しみ方がある本だと思う。風俗小説として読むと、人々の思惑が交差しあう様子や人々の持つ心の空虚などに共感や苛立ちを覚えることができて楽しかった。また、本作は地の文と主人公の日記からの引用文、作中の現役作家の著作や実際に存在するだろう書籍からの引用文とを繋ぎ合わせてできた小説であり、この引用文というのが抜き出すとどれも似たり寄ったりに感じられることから、「文章を書くこと」とはどういうことなのか?という投げかけや皮肉にもなっているように思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 恋をしたから「文章」を書くのか? 「文章」を学んだから、「恋愛」に悩むのか? 普通の主婦や女子学生、現役作家、様々な人物の切なくリアルな世紀末の恋愛模様を、鋭利な風刺と見事な諧謔で描く、傑作長編小説。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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どこにでもあるような目白の〈平凡な中流家庭〉の主婦、娘、フランス文学の助手、〈現役作家〉の視点で織りなせれる〈物語〉は書かれた頃の、1985年の〈リアリズム〉小説で、〈フローベルの『ボヴァリー夫人』を下敷き〉にしつつ、日本の作家の文章の〈コラージュ〉で出来ていて、丸谷才一の『文章...
どこにでもあるような目白の〈平凡な中流家庭〉の主婦、娘、フランス文学の助手、〈現役作家〉の視点で織りなせれる〈物語〉は書かれた頃の、1985年の〈リアリズム〉小説で、〈フローベルの『ボヴァリー夫人』を下敷き〉にしつつ、日本の作家の文章の〈コラージュ〉で出来ていて、丸谷才一の『文章読本』のパロディでもあるらしい。エッセイと同じように毒を含み、『岸辺のない海』と同じように「書くこと」を中堅の純文学を書いている〈現役作家〉を通して書かれている。女子学生、中年の男女、作家、編集者、批評家などに向けられる諧謔精神。 なぜ自分は金井美恵子が好きなのかと考えていたが、本人はもちろん意識していないだろうが、アイルランド人に通じる諧謔精神と毒のあるユーモア、言葉遣いの巧さが好きなんだろうなと思った。 複数の視点がある点は南米文学のようだ。 巻末の創作意図を語る〈金井美恵子インタビュー〉も面白かった。(もしかしたらこれもフィクション?)
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タイトルからすれば谷崎や三島の『文章読本』の金井版に見えるのだが、実はこれはれっきとした長編小説なのだ。後に書かれた3作と合わせて「目白4部作と呼ばれるようになる作品群の第1作にあたる。小説作法はかなり独特だ。小説中には多くの他の作家の作品が引用されたりしつつ、同時に自身の作品を...
タイトルからすれば谷崎や三島の『文章読本』の金井版に見えるのだが、実はこれはれっきとした長編小説なのだ。後に書かれた3作と合わせて「目白4部作と呼ばれるようになる作品群の第1作にあたる。小説作法はかなり独特だ。小説中には多くの他の作家の作品が引用されたりしつつ、同時に自身の作品をも含めた批評意識が同時進行していく。プロット自体は、ありきたりの恋愛(けっして燃えるようなそれではなく)が描かれているに過ぎない。それでは、何が小説を形作っているのか。様々な、(わざと)当たり前に語られる「言説」こそがそれである。
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面白かった。登場人物たちはそれぞれわざとらしいくらい類型的に描かれている。しはしば作中でも台詞を喋るように、とか書き割りのようにとかいった描写が出て来たり、芝居のト書きのように会話が書かれていたりする。 それはそれぞれの役割にたいする自己言及のように思われる。主婦と言う役割、娘と...
面白かった。登場人物たちはそれぞれわざとらしいくらい類型的に描かれている。しはしば作中でも台詞を喋るように、とか書き割りのようにとかいった描写が出て来たり、芝居のト書きのように会話が書かれていたりする。 それはそれぞれの役割にたいする自己言及のように思われる。主婦と言う役割、娘という役割…。 それぞれの人物を描く作者の視点はとことん突き放し、ひたすら第三者に徹し、時に嘲笑しているようだが、その緻密な筆致には単なる役割を割り当てている以上の作者としての役目を感じる。
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『目白四部作』の1冊。 シニカルだったり滑稽だったり、ストーリー的に大きな動きはないが飽きずに楽しめる。 あとがきに『文章の出所を「註」という形でつけてみたい』とあったが、本当に註がついていたらどうなっていたのか、ちょっと気になる。 流石に煩雑すぎるだろうかw
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あはは・・・もうなんて面白い“小説”なんでしょう。 目白4部作って、一冊読むごとにこれが4冊の中で一番面白いんじゃないか、と思わせられるところが素晴らしいというか、オソロしいというか。(*^_^*) この「文章教室」では、モノを書くことに目覚めた(っていう言い方、イヤだなぁ。...
あはは・・・もうなんて面白い“小説”なんでしょう。 目白4部作って、一冊読むごとにこれが4冊の中で一番面白いんじゃないか、と思わせられるところが素晴らしいというか、オソロしいというか。(*^_^*) この「文章教室」では、モノを書くことに目覚めた(っていう言い方、イヤだなぁ。(*^_^*))主婦の絵真が折々に書き散らすその時の気持ちの引用と、実在のプロ作家や架空の作家たちの文章の抜粋が、すごぉ~~~~~く陳腐で恥ずかしいくらいに見えるところが、居心地の悪い気持ちよさ、って感じ?? だって、村上春樹の文章まで、なに、お気楽なこと言ってんのよ、あんた? くらい言いたくなってしまうんだもの。(大汗) ホント、金井さんと言う人にはコワいものは何もないんでしょうね。 私も絵真と同じく、もう大きくなった娘を持つ主婦で文章を書くことが好きで、と、でも私は絵真じゃないもん!とそっと辺りを見回して確認したくなるのもまた自虐的な気持ちよさ?? とにかく、出てくる人たち全てがスノッブで、もちろん、好きになれるはずのメンバーではないにも関わらず、嫌いにはなれない、というこの絶妙な匙加減には参ってしまう。 そして・・・・今回、もう何回目になるかわからいくらいの再読なのだけど、絵真の書く、いかにも、の文章が、これまでとは違って、うん、いいじゃん、これって上手な文章なんじゃないの??と思えてしまったところが面白かった。 これは私が年を重ねて“素直”(*^_^*)になったっていうことかも??なんて、これもまたアハハなんだけど。
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「書く」ことをテーマにした小説なのだが、実は「書か/けない」ところの方が重要である気がしてならない。一番最初のそういうシーンは、佐藤絵真が愛人と入ったホテルで「深紅の花柄のベッドの上に丸ごと置かれたニワトリ」を見たときの「うろたえぶり」をノートに「書くことができない」というところ...
「書く」ことをテーマにした小説なのだが、実は「書か/けない」ところの方が重要である気がしてならない。一番最初のそういうシーンは、佐藤絵真が愛人と入ったホテルで「深紅の花柄のベッドの上に丸ごと置かれたニワトリ」を見たときの「うろたえぶり」をノートに「書くことができない」というところで、その「文章化できない」という事態は、もう一人の主人公である現役作家が失恋した際にも訪れる。剥き出しのままの「いま」の現実に直面するときがおそらくその機縁で、一方の主婦はそこに「嘘」(フィクション)を交えることで対処し、他方の作家は「告白」という禁じ手を使うことで、逆に文壇で評価されてしまう。強烈な皮肉のビルドゥングス・ロマン。
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