学校経営の改革戦略 の商品レビュー
授業改革はルアン先生や宮沢賢治先生に聞いたらいいけど、学校改革はどうしたらいいのだろう。そんな悩みにぴったりの本がこれ。本書のキーワードは学校文化の経営である。本書では「学校文化の醸成とは積極的で、健康的な認識枠から、意味ある行動様式を生み出すことであり、消極的な認識枠を積極的...
授業改革はルアン先生や宮沢賢治先生に聞いたらいいけど、学校改革はどうしたらいいのだろう。そんな悩みにぴったりの本がこれ。本書のキーワードは学校文化の経営である。本書では「学校文化の醸成とは積極的で、健康的な認識枠から、意味ある行動様式を生み出すことであり、消極的な認識枠を積極的な枠組みに変えながら、新しい行動様式を生み出すことにある」と言う。少し注釈をつければ、「積極的で、健康的な認識枠」というのは学校経営の目指す学校文化であり、「消極的な認識枠」とは著者によれば「不信感、人権感覚の欠如、上下服従関係」などを指す。つまり、人権感覚の欠落した文化から人権感覚に満ち溢れた学校文化へと書き換えることが大切だということなのだ。著者はこれを「学校文化の経営」と定義している(184頁)。 そうそう、「人権教育のための国連10年」で「人権文化」がどうのこうのと言われていたけど、その人権文化を学校改革の柱にしていくにはこのようなきちんとした戦略に立った学校経営の構想が必要なのだ。著者は日本の学校経営学の第一人者なのだから、その最先端の理論を活用させて頂かない手はない。本書ではそうした学校文化経営のためのいろいろな事例と理論を日米の比較の中でどんどん紹介している。たとえばアメリカで試みられているSBM(school-based management自律性の高い)学校の取り組みなんかは校区事業として絶対にやってみたいシステムだ(第四章)。さらにカリキュラム経営(第七、八章)、校内研修(第九章)、学級経営(第十章)、養護教諭やスクールカウンセラーのこと(第十四章)、学校経営のリーダーシップ(第十六、十七章)、家庭・地域との連携(第二十章)など内容も実に盛りだくさんである。 学校経営というと校長の仕事だ、と突き放してしまうことはない。第十八章では日米の学校管理職養成について言及し、アメリカでは管理職養成に大学院教育が活用されていることを示した上で、日本ではたとえば「九州大学大学院人間環境学研究科では、夜間の『学校改善コース』を設置して、幅広い学問の基礎をもった学校指導者(必ずしも管理職ではない)をめざしたカリキュラムを編成し、平成八年度から原職者を受け入れている」というように管理職に限らない新しいリーダーシップの養成も著者自身の実践を踏まえて提起している。学校改革をめざそうという人はその立場の如何にかかわらず目を通してみてはどうだろうか。問題は少々値段が高いということかな。高くて買うのに躊躇したなら大学院に入ってみようか。お~っと、そのほうが高いってか。 学校経営は管理職に任せて置けない。 ★★★★
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