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ヨーロッパ法史入門 の商品レビュー

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2023/07/03

意外と貴重な「ヨーロッパ法史」の簡略な通史。 法の歴史を研究する学問は一般に法制史と呼ばれるが、この法制史という概念自体が曲者。 世界史の教科書の各章冒頭に置かれるような、ローマの民会がどうの封建制がうんぬんという「国の在り方」の歴史(国制史)と、私法や裁判上の各概念の発達を扱...

意外と貴重な「ヨーロッパ法史」の簡略な通史。 法の歴史を研究する学問は一般に法制史と呼ばれるが、この法制史という概念自体が曲者。 世界史の教科書の各章冒頭に置かれるような、ローマの民会がどうの封建制がうんぬんという「国の在り方」の歴史(国制史)と、私法や裁判上の各概念の発達を扱う、法学の素養がないとなかなか読めない各論(私法史)を合わせたものを、研究分野としての法制史と呼んでいる。 両分野は必ずしもパラレルには進行しないため、概説書も国制史と私法史に分けて書かれることが多い。加えて古代ローマから国民国家までの長いタイムスパンをいっぺんに扱うことの難しさもあり、全体としての「ヨーロッパ法史」を概観できる本は少ないそう。 そういう意味で、これら全てのトピックを射程に入れており、しかも本文120ページという薄さを実現した本書は画期的と言えるだろう。 一つ一つのトピックへの記述はとても充分とは言えないものの、カバー範囲対ページ数で考えたらまあ満足のいくレベルかと思う。 ただ古い本なのとドイツ語からの翻訳のためか、文章はかなり難解。それで気をつけてよくよく読んでみたら当たり前のことが書いてあるだけ、ということもままあり、ある程度の飛ばし読みを余儀なくされる。 各時代にどういう法が影響力を持ったのかと、その特徴を3つくらい読み取れたら一節の内容としては充分だろう。 ずば抜けた名著というほどではないが、体系的に学びづらいヨーロッパ法制史について簡便な見取り図を提供してくれる有用な本。 類書の『ローマ法とヨーロッパ』とも比較してみたいところ。

Posted byブクログ