にせもの美術史 の商品レビュー
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キュレーターでもある筆者のノンフィクション贋作騒動のあれこれ。 芸術界隈に精通しているからこそ、描かれる贋作の描写にリアリティがある。 ホーヴィングの語った「ニード(需要)、スピード(速さ)、グリード(強欲)」は贋作だけじゃなくあらゆることに言えてしまう気がするなぁ。『ファスト&スロー』でも似たようなことが語られてたけど、あまりに自分に都合の良い話があればまずは疑ったほうがいい。簡単に稼げる方法なんてないってね。 そして同様に、一流の鑑定師達であっても「すぐれた贋作はいまも壁にかけられているのです」と零す程度には難しい世界なのだなぁ。あと最もバレない贋作の作り方は「さいごに」であったような文明の異物をすべて偽造する…というのも興味深い。
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美術品の贋作の何たるかを理解するにあたっては、本書に紹介されている以下のエピソードを読めば事足りるだろう。 (以下概略) ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館が1912年に入手したテラコッタの婦人像はバスティアニーニ(注:著者が史上最強の贋作者の1人として記している)の贋作だ...
美術品の贋作の何たるかを理解するにあたっては、本書に紹介されている以下のエピソードを読めば事足りるだろう。 (以下概略) ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館が1912年に入手したテラコッタの婦人像はバスティアニーニ(注:著者が史上最強の贋作者の1人として記している)の贋作だと考えられていた。オリジナルはルーブルにあるデシデリオ・ダ・セッティニャーノのもので、こちらは正真正銘の本物ということだった。ところが現在、ルーブルのデシデリオが贋作疑惑に包まれている。どうやら、バスティアニーニはヴィクトリア・アンド・アルバート美術館のテラコッタ婦人像をモデルにしてルーブルのデシデリオをつくったらしいのだ。(概略終わり) ルーブルのような超有名美術館にも平然と贋作が陳列されているという現実。真作が贋作に、贋作が真作に入れ替わる鑑定の難しさ、すべての科学的テストをかいくぐる贋作の凄味----メトロポリタン美術館の館長まで務めた実務家が記したものだけに、贋作者の系譜、贋作にだまされ、それを見破り返すいたちごっこに関しては読み応え十分の内容となっている。著者本人はかなり尊大な性格のようで、文章の端々に顔をのぞかせるドヤ顔はいただけないし、文章そのものも読みやすいとは言いがたい。しかし、そうしたマイナス面を差し引いても一読の価値はあるだろう。面白かった。
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下手なサスペンスよりもわくわくどきどき。 メトロポリタン美術館館長著のノンフィクション。 知識と最新科学と審美眼と誇りを武器に 贋作を見破っていく過程にどきどき。
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