日本人と地獄 の商品レビュー

石田瑞磨(著者)

2024/03/07

『日本人と地獄』
2024年3月7日読了

地獄という概念について、その成立や日本へ導入された歴史、文芸や美術との関わりなど、包括的に扱った一冊。
地獄思想と聞くと源信『往生要集』以降に体系づけられ一般化していくため、源信から始まる書籍が多い印象だが、本書ではそれ以前の思想や著述を指摘する点で興味深かった。
本書は文芸作品での地獄の記述に関しての説明が具体的で、特に、「堕獄の人」「冥界に行ってきた人」について、それぞれ一章設けられている。各章には数多くのエピソードが含まれており、それぞれについて原文を引用しながら説明されている。きちんとした原文の訳がないため、すべてを理解しようとすると難しい箇所（漢文など）もあるが、エピソードの概要を知る分には不足ない程度の説明もなされている。
地獄の入門書として、ぜひ読んでおきたい一冊。