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昭南島に蘭ありや の商品レビュー

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2017/11/09

社会派エンターテインメントとして知られる佐々木譲氏の、第二次世界大戦を題材にした小説だった。「昭南島」とはどこのことか? 今のフィリピンだ。1941年イギリス領だったフィリピンを大日本帝国が占領し、昭南島と名付けたのだ。 物語は、フィリピンで貿易を営む桜井家に雇われている台湾生...

社会派エンターテインメントとして知られる佐々木譲氏の、第二次世界大戦を題材にした小説だった。「昭南島」とはどこのことか? 今のフィリピンだ。1941年イギリス領だったフィリピンを大日本帝国が占領し、昭南島と名付けたのだ。 物語は、フィリピンで貿易を営む桜井家に雇われている台湾生まれの客家の青年「梁光前」を主人公とし、彼の中国人にもなりきれず日本人とも違う微妙な立場の苦しみを中心に、「昭南島」誕生から日本の敗戦までの約3年半を書いていた。 梁光前が密かに想いを寄せる桜井家の娘摩耶は、日本の領土となるまでの間、イギリス側に捉えられていたところを、占領した日本軍に助けられ、その美しさから「昭南島の蘭の花」と噂された。桜井家のことを気にしながらも、中国側、日本側、どちらからもスパイ容疑をかけられる梁光前は、自分の身を守るのが精いっぱいだ。日本領土になってからは、一時的に身を置いていた中国側義勇軍の仲間からかけられたスパイ容疑を晴らすために、大日本帝国最高の大臣、東条英機暗殺を申し出る…。 軍人中心の戦争モノは何冊か読んだが、支配下における国での親日派の東洋人の話は初めてで、興味深く読んだ。世界大戦を公平に知るためにも、日本側からの話と占領下側の話と両方読んでみるのも面白いと思ったからだ。小さな島であるフィリピンの歴史を知るのもいい勉強だった。 淡いロマンスあり戦争シーンもありと息つく間もないストーリー展開で、ハラハラドキドキさせられる。幼馴染みの日本人女性摩耶に想いを寄せても、所詮は身分違いとあきらめ、それでも彼女を守るために、自分の生活や安全さえも犠牲にする梁光前には、日本のサムライ魂さえ感じた。 今ではもう消え去った幻の「昭南島」と未遂に終わった東条暗殺事件。 南の島で可憐に咲く蘭の花だけが、語り部となっているのだろうか。単に戦争モノとしてではなく、恋愛小説として読むのもいいだろう。 主人公には、彼に想いを寄せる中国人女性もいて、彼が本当に一人になったとき、彼をささえるために彼の元へ戻ってくる。 民族意識や国民性、忠誠心、そんなものよりも何よりも生きる力になるのは、人を愛する気持ちなのだと、改めて悟った作品だった。

Posted byブクログ

2010/08/19

日本の植民地下の台湾人・梁光前が「昭南島」となったシンガポールで自分が「日本人」「台湾人」「中国人」のどれを選んで生きていくのか迷いながら「東条英機暗殺計画」に巻き込まれていく。 同時期のシンガポールが舞台の『総督と呼ばれた男』の登場人物も出ている。

Posted byブクログ