墨子 の商品レビュー
中国の春秋戦国時代…
中国の春秋戦国時代に儒家と勢力を二分した思想家集団墨家の思想の中心を丹念に説く本。教えそのものも、著者の解説も小難しいところが少なく、当時の世相や考え方をすらすらと学べる。
文庫OFF
孔子と対立した墨子は…
孔子と対立した墨子は、今ではあまり知られていません。しかし、非攻や兼愛という思想が当時存在したと知れたことが新鮮でした。
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※このレビューにはネタバレを含みます
戦乱の世において平和主義を説いた異色の思想家集団の実態を知ることができる貴重な参考書です。 この本を読み、「非攻」という平和主義や「兼愛」という博愛主義を説いていた墨家が進んで武装し戦闘していたというのはかなり驚きでした。ですがこれは簡単な話ではなく、戦国時代という過酷な時代背景をいかに生き抜くかを極限まで考えた上でのお話です。 非攻を唱えながら進んで武装したことを矛盾と一言で切り捨てることはできません。なぜそのようなことになったのかというのは私にとって非常に興味深いものがありました。 本書ではそんな墨家がどのように生まれ、どのようにして中国に広がり、さらにはいかにして消滅していったかが説かれます。
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墨子 著:浅野 裕一 講談社学術文庫 1319 墨子は、本名を墨翟という 墨子がさかんに諸国を遊説して、思想活動を行っていたのは、BC439以前から、BC393あたりまでとなる 墨子の思想は、十の思想からなり、これを十論と読んでいる 尚賢・尚同、節用・節葬、非楽・非命、天志...
墨子 著:浅野 裕一 講談社学術文庫 1319 墨子は、本名を墨翟という 墨子がさかんに諸国を遊説して、思想活動を行っていたのは、BC439以前から、BC393あたりまでとなる 墨子の思想は、十の思想からなり、これを十論と読んでいる 尚賢・尚同、節用・節葬、非楽・非命、天志・明鬼、兼愛・非攻、の各々2つづつの五種類に区分されている 「墨子」は、漢書には、墨子71篇と記録されているが、現在伝わっているのは、53篇である 「墨子」は、戦国末期から秦、漢へと移る過程で消えていった。焚書坑儒にあったものとも、儒家にくらべてあまりにも論理的で、融通性に欠けていたからだとも言われている 清末に、再評価され、兼愛とは、キリストの教えそのものであるとか、尚同論は、ルソーの社会契約説と同じ主張だとか、墨子の論理は、アリストテレスに近いなど、見直された。 本文は、現代訳、書き下し文、漢文原語、注釈、解説からなっている 気になったものは、以下です ・人材は国の宝である ・世の中がうまく行かないのは、すべて互いに愛し合わないことに生じている ・自己と他者を区別せずに愛し合えば安定し、互いに憎しみ合えば混乱する ・そもそも犯罪とは、自己の利益獲得のために他者に損害を与える行為である そして、この定義を適用すれば、侵略戦争もまた国家の手による犯罪に他ならない ・天の保有する人民を殺しておいて、それが人間の利益になるなどということは、ほとんどありえない 攻戦のための軍費を計算してみるに、この出費が民生の根本に損害を与え、世界中の人民の富を使い果たしていることは、とても数えきれぬほどである ・聖人の政治が利益を倍増できるのは、決して自国の外部に領土を拡大するからではない 自国に依拠しながら、国内で無益な浪費を取り除いていけば、それで充分に利益を倍増できるのである ・苦労して生産した富は、死者のためにではなく生きている人々のためにこそ、用いるべきであり、喪を簡略化して、生産活動に復帰し、各人の生産した富で互いに他者に利益を分け与えるべきである ・天下に正義があれば、人類は生存でき、正義がなくなれば、人類は死に絶える 義とは本来、人々を正しい方向に矯正することである ・言論には必ず基準を立てなければいけない ①本づけること ②原(たず)ねること ③用いること ・知るとは、接(まじわ)るなり 知覚するとは、外界の事物に交接する行為である ・智とは、明らかにするなり 認識主体とは、明瞭にできる知覚装置の本体である ・知覚は記憶される 知覚するとは、知覚装置(五感)を用いて外界の事物に応接し、事物が知覚装置外へと過ぎ去った後も、まるで今もその事物を眼前に視認しているかのように、明確な知覚を形成する行為である ・認識主体は分析し統合する 認識主体とは、指揮下の知覚装置がもたらす各種の知覚を比較・検討し、あたかも光で闇を照らすように、対象の事物を明確に認識する主体である 目次 学術文庫版への序文 凡例 第1章 尚賢上篇 第2章 尚同上篇 第3章 兼愛上篇 第4章 非攻上篇 第5章 非攻下篇 第6章 節用上篇 第7章 節葬下篇 第8章 天志上篇 第9章 明鬼下篇 第10章 非楽上篇 第11章 非命上篇 第12章 非儒下篇 第13章 経上篇・経説上篇 第14章 公孟編 第15章 公輸編 第16章 号令篇 解説 参考文献 春秋時代要図 戦国時代の形勢図 ISBN:9784061593190 出版社:講談社 判型:文庫 ページ数:302ページ 定価:1020円(本体) 1998年03月10日第1刷 2022年04月26日第25刷
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墨子の思想の十論について学べる本。中には理解し難いものもあったと思いつつも、当時の時代を想像しながら考えると、例えば、節葬や非楽といった考え方も合理的な考えなのではないか、と共感できることが多かった。 また、特に有名な兼愛、非攻という考え方には共感を覚える。自己愛が強いがために、...
墨子の思想の十論について学べる本。中には理解し難いものもあったと思いつつも、当時の時代を想像しながら考えると、例えば、節葬や非楽といった考え方も合理的な考えなのではないか、と共感できることが多かった。 また、特に有名な兼愛、非攻という考え方には共感を覚える。自己愛が強いがために、他者を犠牲にしてでも自分の利益をとってしまい、周りの人に対する秩序や規律を乱してしまう、それが結果、非合理的で犯罪を罪と考えない戦争を引き起こしてしまうことにつながってしまう。自己と他者を比較せずに愛するという兼愛論の考え方を大事にしたい。(墨子が言っている愛は、あくまで他者を犠牲にして自分の利益をとらないぐらいの段階に留まっているらしい。) 精神的な面での考えがないのは気になるところ。 墨子を読んでその思想だけでなく、当時の時代背景や学団員との関係、普及活動の変遷、孔子など他の思想家との違いをよく理解して読めると良いと感じる。
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群雄割拠の春秋戦国時代、どれだけの民衆が貧困に喘ぎ、そして無惨に死んだのだろうか。そんな時代に生きたからこそ、墨子の唱える「兼愛論」「非攻論」に尊さを感じる。彼はその時代の地獄を見たのだろう。彼にとって思想はあくまでも平和を確立するための手段である。彼の思想だけでその是非を論じる...
群雄割拠の春秋戦国時代、どれだけの民衆が貧困に喘ぎ、そして無惨に死んだのだろうか。そんな時代に生きたからこそ、墨子の唱える「兼愛論」「非攻論」に尊さを感じる。彼はその時代の地獄を見たのだろう。彼にとって思想はあくまでも平和を確立するための手段である。彼の思想だけでその是非を論じるべきでない。彼の生き様こそ注目すべきだ。天下救済のため諸国を遊説し、また自ら武装集団を組織し、侵略戦争を防ぐため戦禍にその身を投じた。万民救済のため奔走し、理想と現実の狭間で思い悩む墨子の生涯、その偉大さを感じられる思想であった。
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中国人の考え方を…ッて感じじゃナイな。 中国古代思想の中でも異質。 「非攻・兼愛」をはじめとした、素人の私が考えたって受け入れられなさそうな特異な思想。 一時は儒家に匹敵する一大学団を築きながらも、秦代に急に姿を消し、以後絶学する、ッて。 なんてドラマチック。 ずっと気になる人...
中国人の考え方を…ッて感じじゃナイな。 中国古代思想の中でも異質。 「非攻・兼愛」をはじめとした、素人の私が考えたって受け入れられなさそうな特異な思想。 一時は儒家に匹敵する一大学団を築きながらも、秦代に急に姿を消し、以後絶学する、ッて。 なんてドラマチック。 ずっと気になる人だったので、読み終えて満足。 感想。 真摯に当時の現実に向き合った末の思想、という気はする。 ただ、当時の考え方、風俗習慣からしたら、受け入れられなかっただろうなあ…。 むしろ今の方が流行りそう。 あと決定的に精神的な部分が欠けてる。と思う。 なのに鬼神信仰のような宗教的なトコとのギャップが酷い。 あ、『兼愛篇』の小タイトル「愛は地球を救う」に地味に笑った。 笑 すごいタイトル…。 余談ですが、中国では墨子のアニメがあるらしい。 何をどうアニメにするんだ…?
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墨子の思想が解りやすく解説されている。 原典は散逸してしまっており、 この本は残っている部分の抄訳であるが、 墨子が貧困や戦争と言った社会問題の解決を真剣に考え、 思想家としての活動を行なっていた事が分かる。 しかし、墨子の唱えた理想主義は、 結局のところ欲深い人間の社会に合...
墨子の思想が解りやすく解説されている。 原典は散逸してしまっており、 この本は残っている部分の抄訳であるが、 墨子が貧困や戦争と言った社会問題の解決を真剣に考え、 思想家としての活動を行なっていた事が分かる。 しかし、墨子の唱えた理想主義は、 結局のところ欲深い人間の社会に合致せず、 多くの人間にとっては都合の悪い考え方だった ということも浮かび上がってくる。 そして著者が儒教を嫌いだということも。
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20/6/12 世間の混乱は互いに愛し合わないとの原因から発生している 少量の黒色を見たときには黒と言い、多量の黒色を見たときには白だと言ったとすれば、白黒の判断がつかない人だと言うだろう。一人殺して罪となり、沢山殺せば英雄だなんておかしい。戦争はおかしい。 自己と他者とを...
20/6/12 世間の混乱は互いに愛し合わないとの原因から発生している 少量の黒色を見たときには黒と言い、多量の黒色を見たときには白だと言ったとすれば、白黒の判断がつかない人だと言うだろう。一人殺して罪となり、沢山殺せば英雄だなんておかしい。戦争はおかしい。 自己と他者とを同時に愛し合い、互いに他者に利益を与え合う結果、必ず天から賞を受ける。
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中国の戦国時代に活躍した墨子という人物の書物です。博愛主義・侵略戦争の否定など当時の中国としてはきわめて先進的な思想を展開しました。最近、「墨攻」という物語が映画になりましたが、その原典はこの墨子です。代表的な内容の原文・訳文と解説文が載せられていて読みやすい本といえます。
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