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アラスカ 風のような物語 の商品レビュー

4.4

20件のお客様レビュー

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2014/08/25

20代後半に星野道夫さんの本に出会ってから、 多大なる影響を受けてきた。 意識しているわけでもなく、つい何度も手に取ってしまう。 星野氏の写真、文章は、 アラスカの自然や人々の前でどこまでも謙虚かつ自然で、 自然に対する畏怖と親しみが一体になっている。 その星野氏の在り方に衝...

20代後半に星野道夫さんの本に出会ってから、 多大なる影響を受けてきた。 意識しているわけでもなく、つい何度も手に取ってしまう。 星野氏の写真、文章は、 アラスカの自然や人々の前でどこまでも謙虚かつ自然で、 自然に対する畏怖と親しみが一体になっている。 その星野氏の在り方に衝撃を受け、 今でも憧れをもってその在り方に 近づきたいと思っているのかもしれない。 久しぶりに本棚から出したこの本は、 再読なのに新鮮な衝撃をもたらしてくれた。 アラスカの辺境の地の原住民の子供たちに絵を描かせると、 決まって大きな風景のごく片隅に人物を小さく描くという。 人間と自然の関係はそのような感覚でとらえられるのだろうが、 その感覚は、日本人にもあった(ある)もののように思う。 人間がどういう生き物なのかを 自然の一部として教えてもらえるような本。 「早春。小さな焚き火が揺れている。パチパチパチパチ、  僕の気持ちをほぐしてくれる。  熱いコーヒーをすすれば、もう何もいらない。  やっぱりおかしいね、人間の気持ちって。  どうしようもなく些細な日常に左右されていくけど、  新しい山靴や、春の気配で、こんなにも豊かになれるのだから。  人の心は深く、そして不思議なほど浅い。  きっとその浅さで、人は生きてゆける。」 「ある晩オーロラが現れ、全天を舞った。  人はいつも無意識のうちに、自分の心を通して風景を見ている。  オーロラの不思議な光が語りかけてくるものは、  それを見つめる者の、内なる心の風景の中にあるのだろう。」 星野さんは1952年生まれで大学生だったときに、 神田の古本屋街の洋書専門店でアラスカの写真集を見つけ、 その本に載っていた小さなエスキモーの村に心を奪われた。 その村はシシュマレフ村。 訪ねてみたいが、訪ねようにも方法がわからない。 手紙を書くにも、住所もわからない。 しかし、辞書で「代表者」という単語を調べ「Mayor」という言葉を見つけ、 「Mayor Shishmaref Alasla U.S.A」 という宛先で手紙を出す。 内容は、「村を訪れたいが、誰も知りません。 なんでも働くのでどなたかの家に置いてください」というものだったらしい。 半年後、奇跡的に返事があり、彼はアラスカへ。 1971年の夏だったそうだ。 その後アラスカ大学へ進学し、以後アラスカの人々、自然、野生動物を撮り続け、 国内の雑誌だけでなく海外の著名な雑誌にも作品を発表。 多くの写真集やエッセイが残っている。 1996年にカムチャッカ半島でヒグマに襲われ逝去。享年43歳。

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2014/06/10

アラスカに暮らす動物の話というよりは、そこに暮らす人々の話。エスキモー、インディアンの人たちの伝統的な暮らしだけでなく、時代が変わるにつれて彼ら自身が変わっていく姿も描かれています。 特に印象的だったのは、彼らがアラスカで共に生きる動物たちの命に敬意を払っていることが分かるエピソ...

アラスカに暮らす動物の話というよりは、そこに暮らす人々の話。エスキモー、インディアンの人たちの伝統的な暮らしだけでなく、時代が変わるにつれて彼ら自身が変わっていく姿も描かれています。 特に印象的だったのは、彼らがアラスカで共に生きる動物たちの命に敬意を払っていることが分かるエピソードの数々でした。

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2012/08/08

 千葉の中央博物館で見た写真が目に焼き付いて、そのままミュージアム・ショップで買ってしまった。衝動買いだけど、買ってよかった。写真もステキだったけど、文章もよかった。  自然や風景や動物の話はもちろんなんだけど、それらがきちんと胸に届いてくるのは、彼の書く物語が「人間」を描いて...

 千葉の中央博物館で見た写真が目に焼き付いて、そのままミュージアム・ショップで買ってしまった。衝動買いだけど、買ってよかった。写真もステキだったけど、文章もよかった。  自然や風景や動物の話はもちろんなんだけど、それらがきちんと胸に届いてくるのは、彼の書く物語が「人間」を描いているからだ。こんなにすばらしい風景や動物の写真を撮る人の書いた文章が、根本のところに人間をおいているというは逆説的なような気がするかもしれないけど、そんなことはない。  彼自身が遺稿の中で書いている。「その土地の風景を自分のものにするために、そこで誰かと出会わなければならない」。この言葉が意味することを、正直言って僕は本当に実感することが出来ない。でも、おそらく真実なのであろうと心が直感している。  おそらく、人間の自然の一部で、中でも彼が描き出す人たちは自然そのもので、いや何よりも文章を書いている彼そのものが自然のとけ込んでいて、読んでいる僕はかろうじて彼らを通じることでのみ、自然の真実の姿にちらりと触れることがでいるのかもしれない。自然の姿、というのは、ただ壁に貼られた写真ではなく、いわば息づかいなのである。  アラスカに暮らす人たちの人生は、人類の歴史のしわ寄せを一身に背負っているようで、決して安易なものではない。それが豊かとか貧しいとか、幸せとか不幸せとか、そういう言葉で定義してはいけないものであると思う。だけど、アルコール中毒や自殺のことなどを読むと、人類というのは何か大事なものを忘れてしまおうとしているのではないかという思いがこみ上げてくる。  美しくて、しかも何かを語りかけてくるような写真が心から離れなくなって買った本だけど、語りかけてくる「何か」が、これほど大きなものであるとは読んでみるまで想像もしていなかった。よかった。

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2011/10/11

”旅をする木”は圧倒的にやさしい語り口だったと感じたが、今回は謙虚さを感じたような気がする。写真家として生業を立てていながら、時に写真を撮らないことを判断するといった明記が幾度か現れる。それが彼なりのアラスカへのレスペクトの表し方だったのではないかと感じられる。効果的に挿入される...

”旅をする木”は圧倒的にやさしい語り口だったと感じたが、今回は謙虚さを感じたような気がする。写真家として生業を立てていながら、時に写真を撮らないことを判断するといった明記が幾度か現れる。それが彼なりのアラスカへのレスペクトの表し方だったのではないかと感じられる。効果的に挿入される写真が素晴らしい。特にすごく優しい顔をして映っている熊が美しい。この本もまた時々読み返したいなと思う。

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2011/09/28

便利なことと不便なことと。受け入れていくことと守り続けることと。 新しいものと古いものと。生まれ生きていくことと死んでいくことと。 人間も自然の一部なのに難しいんだなって。 正解はわからなかったけど色々と考えてしまう本だった。 ハッとさせられる文章がちりばめられてた。

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2020/07/15

ジムは指示を与えながら、子どもたち自身にカリブーの解体をさせたに違いない。わずか数分前まで、全存在をもって原野に生きてきた一頭のカリブー。ひとつのナイフで、いかに正確に、丁寧にカリブーの身体を離してゆくのかを学ぶこと・・。それは、いかにカリブーの死を自分の中で理解してゆくかという...

ジムは指示を与えながら、子どもたち自身にカリブーの解体をさせたに違いない。わずか数分前まで、全存在をもって原野に生きてきた一頭のカリブー。ひとつのナイフで、いかに正確に、丁寧にカリブーの身体を離してゆくのかを学ぶこと・・。それは、いかにカリブーの死を自分の中で理解してゆくかということでもあるのだ。(p.41) あるエスキモーの老婆と秋のツンドラで過ごした日のことを覚えている。彼女は土を踏みしめながらネズミの穴を探していた。冬に備え、ネズミはエスキモーポテトと呼ばれる小指ほどの植物の根を貯えているらしい。穴を掘り起こすと、本当にひと塊ほどのエスキモーポテトが見つかった。老婆はそれを半分だけとると、持ってきたドライフィッシュ(魚の干物)を代わりに入れ、再び穴を土で覆った。「どうして」と訊く僕を、老婆はそんなこともわからないのかというように見つめ返した。 それはさまざまなことを語りかけてくる。絡み合う生命の綾に生かされている人々。しかし考えてみれば僕たちだって同じなのだ。ただそれがとても見えにくい社会なのかもしれない。(p.247)

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2009/10/29

どうしてこんなに、流れるように心に入ってくるんだろう、 星野さんの文章は。 まだまだいろんな写真を撮って、これ以上ない言葉を付けて、 世に送り出してほしかったな。 一生を通して開いていきたい、そんな本です。

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2009/10/04

‐人はなぜ自然に目をむけるのだろう。 アラスカの原野を歩く、一頭のグリズリーから、マイナス50度の寒気の中でさえずる一羽のシジュウカラから、 どうして僕達は目を離せないのだろうか。それはきっと、そのクマや小鳥を見つめながら、 無意識のうちに、彼らの生命を通して自分の生命を見ている...

‐人はなぜ自然に目をむけるのだろう。 アラスカの原野を歩く、一頭のグリズリーから、マイナス50度の寒気の中でさえずる一羽のシジュウカラから、 どうして僕達は目を離せないのだろうか。それはきっと、そのクマや小鳥を見つめながら、 無意識のうちに、彼らの生命を通して自分の生命を見ているからなのかもしれない。 僕達が生きてゆくための環境には、人間をとりまく生物の多様性が大切なのだろう。 オオカミが徘徊する世界がどこかに存在すると意識できること・・。 それは想像力という見えない豊かさをもたらし、僕達が誰なのか、今どこにいるのかを教え続けてくれるような気がするのだ。 少し寒くなってきた。アカリスの警戒音はまだ聞こえている。 雪を被ったトウヒの木々を見上げても、どこにいるのかもわからない。 これから、長い冬が始まる‐ ‐風のような物語 エピローグより‐ 多数のアラスカの自然や動物の写真&エッセイ。 気持ちがくたびれている時に読むと、冬のひだまりにいる時のような柔らかな暖かさに包まれます。

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2009/10/04

読むきっかけはオダジョーがNHKで星野さんの旅を追いかけたドキュメンタリーのナレーションがきっかけ。 動機は不順だったけど、読んでみたら写真の美しさと星野さんの文章が素敵だった。 自分はなんて小さな人間なんだと思ったり、悩んでいたことがたいしたことないなと思わせたり、とても勇気づ...

読むきっかけはオダジョーがNHKで星野さんの旅を追いかけたドキュメンタリーのナレーションがきっかけ。 動機は不順だったけど、読んでみたら写真の美しさと星野さんの文章が素敵だった。 自分はなんて小さな人間なんだと思ったり、悩んでいたことがたいしたことないなと思わせたり、とても勇気づけられた。 自然の力に感服。

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2009/10/04

アラスカに生活をして、たくさんの動物写真を撮り続けた、星野道夫さんの写真集。 それが、そのときのエピソードつきで紹介されている。 私たちが生きている同じ時間に確かに存在しているが、決して感じることがない遠くにある自然。それを実際に感じることができる一冊。

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