教育と選抜の社会史 の商品レビュー
教育社会学における歴史社会学の名著。著者の天野郁夫の教え子、広田照幸と苅谷剛彦が、解説として最上級の賛辞と謝辞を添えていることからも、本書が世に送り出されている意義は深い。古今東西、縦横無尽に社会や教育制度の歴史を追って理論を導くスタイルは、著者の研究の真骨頂である。 まず、先...
教育社会学における歴史社会学の名著。著者の天野郁夫の教え子、広田照幸と苅谷剛彦が、解説として最上級の賛辞と謝辞を添えていることからも、本書が世に送り出されている意義は深い。古今東西、縦横無尽に社会や教育制度の歴史を追って理論を導くスタイルは、著者の研究の真骨頂である。 まず、先行研究のレビューから示される分析概念の抽出は、範とすべき点が多い。官僚制論、学歴主義の後発理論、文化的再生産論といった枠組みを引きながら、各章のテーマに関する事実を積み上げていく。こうして得られた知見が第12章で収斂されている。 特に一読すれば明らかであるが、現代社会は大きな官僚制というシステムの下で種々の選抜が実施されていることがわかる。「官僚制」は、かなり説明力を持つ言葉であり、大学教育や高等教育論を扱う際、様々な前提条件となることを今一度確認しておきたい。 今日の人文・社会科学分野に対する議論の関係でも示唆があった。明治時代の私立専門学校で教授された政治学・経済学・法学は、農工商の富裕者層子弟にとって、階層の上昇を企図しない「教養」だったという。またそうした高等教育機関は、中産階級の再生産の機能を持つ装置だった。元来の意義を踏まえた上で、大学の今日的役割の再検討が期待される。ちなみに、私立旧制専門学校は「傍系」だったが、近代ヨーロッパの大学における古典を重視した教養を培う学部は「正系」だった。歴史・社会の大きな違いとはいえおもしろい。 また、近年の著書である『大学の誕生』や『高等教育の時代』において詳細に分析されたように、高等教育に係る歴史に繋がる「伏線」が、既にいくつか表れている点も興味深い。高等教育システムの二元重層構造論の原点は本書にあると思う。 <関連論文> http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/jss/pdf/jss570304_137155.pdf http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/36525/20150108102245274269/DaigakuRonshu_44_303.pdf
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[ 内容 ] 「学歴社会」として名高い日本の教育は、近代日本の産業化の過程でどのような政策のもとに築き上げられてきたのだろうか。 新しい産業の担い手を創出するべく、階級制度を超えて発展を遂げた日本の学校教育は、教育費さえあれば誰にも門戸が開かれていた。 しかし、それゆえに激しい競...
[ 内容 ] 「学歴社会」として名高い日本の教育は、近代日本の産業化の過程でどのような政策のもとに築き上げられてきたのだろうか。 新しい産業の担い手を創出するべく、階級制度を超えて発展を遂げた日本の学校教育は、教育費さえあれば誰にも門戸が開かれていた。 しかし、それゆえに激しい競争と「学歴」にいたる学校格差を生み出したのである。 ドーアの後発理論、コリンズの葛藤理論など社会学的分析概念を駆使し、日本の産業化と教育が産み出すダイナミズムを鮮やかに分析・検証。 日本の教育が孕む問題点を明らかにする好著、待望の文庫化。 [ 目次 ] 社会的選抜と教育 選抜の諸制度の起源 ヨーロッパ社会と競争的選抜の制度化 公教育制度の成立と社会階級 日本の近代化と選抜制度 公教育制度の成立 職業と試験の制度化 学校教育と特権の構造 学校の階層的構造と企業 社会階級と教育機会〔ほか〕 [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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