マルクスに誘われて の商品レビュー
▼的場昭弘さん、というマルクス経済学者さん?の、本をいずれ読んでみたいなあ、と。本屋さんでけっこうお見掛けするので。という動機から図書館で借りた本です。内容はなかなか変わっていて、 <的場昭弘さん、というひとりの学者さんの自伝エッセイみたいな。つまりはどういう思いでこの学問を志...
▼的場昭弘さん、というマルクス経済学者さん?の、本をいずれ読んでみたいなあ、と。本屋さんでけっこうお見掛けするので。という動機から図書館で借りた本です。内容はなかなか変わっていて、 <的場昭弘さん、というひとりの学者さんの自伝エッセイみたいな。つまりはどういう思いでこの学問を志したか、そして、どんな段取りでキャリアを作って来たのか、その間にどういう思いでマルクスと向き合ってきたのか> みたいなことがそこはかとなく書きつけられた本で。自伝、と二文字で言うと物足りない(笑)。マルクスの紹介本、というとなんだか的場さんの個人情報?が多すぎる。鵺のような本。それでいて、大変に面白かった。好きです。 ▼70年代、80年代、90年代、00年代・・・・と、言ってみれば日本の(東京圏の)”気分”の現代史でもあります。それはつまり、マルクス主義、マルクスという存在、をどう捉えて、どう向き合って、あるいはどう無視してきたのかという日本全体の動きがあって。それに対してひとりの的場さんと言う人の個人史がクロスする。 ▼一方でマルクスの思想が分かる本か?と言われると、そういうことはあんまりないかも知れません(笑)。ただ、実はこういうののほうが、「マルクス、という言ってみれば作家。その作家の残した文章思想の魅力や可能性」みたいなもの自体は、微温的にすごく読み手に伝わるのではないかと思いました。 ▼あと、戦後の、フランスあたりを中心にした「新しい歴史の考え方」。翻訳を読んで感動したルゴフさんなども含めて。つまりは先入観や「正義論」だけでなくて、民俗学的な?風俗学的な?具体なトリビアや暮らしや無名な民衆の暮らし経済現実を大いにまず踏まえようぜ、的な?歴史の考え方。 ▼これが今は言ってみれば「あたりまえ」で「主流」なんでしょうが、そのあたりがすごく腑に落ちました。平たく言やぁ、現代からしたら阿呆かっていうくらい、例えばマルクス思想なり、国家主義なり、そういう「傾向」に支配された歴史の考え方が以前は跋扈してたってことなんだな、と。
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