マインド の商品レビュー
何を思ったのか、久しぶりに手に取って読んだハードな哲学系の本でした。 著者のジョン・サールに出会ったのは、ホフスタッター&デネットの『マインズ・アイ』の中に所収されている有名な中国人の部屋の論文を読んで以来、約13年ぶり。 本のテーマは、意識、志向性、自由意志、心的...
何を思ったのか、久しぶりに手に取って読んだハードな哲学系の本でした。 著者のジョン・サールに出会ったのは、ホフスタッター&デネットの『マインズ・アイ』の中に所収されている有名な中国人の部屋の論文を読んで以来、約13年ぶり。 本のテーマは、意識、志向性、自由意志、心的因果、知覚、自己、など、「心」の周辺にある問題系であり、筆者はここでそれらの問題整理と解決に向けたアプローチを提示している。(各章ごとにたいてい"結論"が付いていますが、後で見返すときの役にはあまり立たない...) まず始めの準備として、心を扱う上で一般的な「心身二元論」と「唯物論」に代表される各主義を基本的に誤っていると宣言し、正しいアプローチはそのどちらでもない方法だと指摘している。専門家ではないので、実のところ筆者が意図する深さまで理解は到達していないのかもしれないですが、次のようなことなんだと思います。 ・「心」というものは、脳内の神経生理学的な過程から生じる(因果的に還元できる) → 心身二元論は× ・「心」というものは、因果的に還元できるが、存在論的には還元できない (一人称と三人称とでは、存在論的な位置が異なるので、一人称の話を三人称の言葉で語ることはできない) → 唯物論は× このような考え方をベースにして、各問題系の解釈に挑んでいます。 本の中でもあったように、この辺りの問題は近年に脳神経生理学から得られた知見が非常に貢献しているのだと思います (本で言うとオリバー・サックスの『妻を帽子と間違えた男』やラマチャンドランの『脳の中の幽霊』など)。そう感じるために求めて読んでいるような気がしますが、改めて人間てまあ不思議なもんだな、と思います。 また、一人称/三人称の部分は『探求II』あたりのころの柄谷行人の議論を思いおこさせます(「この私」の"単独性"について議論したあたり - 久しぶりに読み返してみてもいいかな)。 全体としては知的刺激性は十分。正しさについては判断できる範囲ではない。面白さは、...まずまずですかね。関連する問題群について網羅的にカバーしようというところもあって、ちょっと読むのがしんどいところも正直ありました。 ということで星4つ。
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読み通すのが大変だったが、なかなかよい心の問題への入門書です。入門書といってもかなり難しい内容で、とくに志向性の問題はぼくにはまだ未消化。しかし、生物学的自然主義や、心身問題を因果論的還元と存在論的還元に組み替えて論じるところ、そこに一人称的存在論という心に特異な存在論が関わるこ...
読み通すのが大変だったが、なかなかよい心の問題への入門書です。入門書といってもかなり難しい内容で、とくに志向性の問題はぼくにはまだ未消化。しかし、生物学的自然主義や、心身問題を因果論的還元と存在論的還元に組み替えて論じるところ、そこに一人称的存在論という心に特異な存在論が関わることなどは、比較的容易に理解できます。また、認識可能なのはセンスデータだけだという論に対して、発生論的誤謬や物とその像の類似概念が意味を持たないことなどの概念で論駁しているところは面白いです。しかし、無意識概念の混乱、自由意志の謎、などは残されたままで、やはり心の哲学の深みを感じます。とにかくサールは、常識的な確信を大事にしていて、科学的世界と日常世界の分離などないことを示そうとしていて、強靱な思索の力を感じます。訳者たちが書いた『心脳問題』もなかなかいい本でした。『心脳問題』の方が、心の問題の「出口なし」の状況をつきつめていた点は興味ぶかいが、社会論の方へ転換してしまうのがちょっと残念だったので、こちらを読めば、もっとディープな心の哲学を考えることができます。
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