アタナシオス神学の研究 の商品レビュー
『アントニオスの手紙』におけるアントニオス像と、アタナシオスが描く『アントニオスの生涯』におけるアントニオス像との相違には、注意が必要である。『アントニオスの手紙』では、「悪魔は遍在し、人間の身体に宿」る(318頁)。悪魔は「体を持たずに不可視的な存在であり、自己を人間の行為の中...
『アントニオスの手紙』におけるアントニオス像と、アタナシオスが描く『アントニオスの生涯』におけるアントニオス像との相違には、注意が必要である。『アントニオスの手紙』では、「悪魔は遍在し、人間の身体に宿」る(318頁)。悪魔は「体を持たずに不可視的な存在であり、自己を人間の行為の中だけで明らかにする」(同)。悪との戦いは、人間が生きている限り、継続する戦いである。ところが、『アントニオスの生涯』においては、悪魔は可視的であり、「何の力もない十字架のしるしで簡単に追い払われてしまう」(同)。 ところで、『アントニオスの生涯』の中で、アタナシオスはアントニオスをアレイオス派の教説と対決させている。そうであれば、アントニオスと悪魔との戦いと、アントニオスとアレイオス派との論争との間には、なんらかの類比関係があると考えるのは自然であろう。関川はこの点について特に言及していないようだが、十分検討に値するテーマであると言えるだろう。
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