「海底遺跡」超古代文明の謎 の商品レビュー

奈須紀幸

2009/10/04

　遺跡と海が好きなので、口絵写真の与那国島の海底遺跡（推測）のキレイな写真につられて借りました。中身も海洋遺跡や海底樹林など興味があるものばかりだったので。
　で、トンデモ系か、海底遺跡を発見した人の探検記のような内容を予想していたのですが、海洋考古学についての実例をあげての紹介、という感じでした。海洋考古学の中身がどうというより、海洋考古学という学問はがくもんたりえるんだよ、という案内本。考古学者で海中を専門的に扱っている人が著者陣にはいないので、そこのところがつっこみが弱く感じたゆえんかもしれません。
　世界にある海底の遺跡とされるものを取り上げ、１万年前くらいは大陸棚の部分まで陸地で、そこには文明の痕跡があるようだよ、っていう流れ。アトランティスがどうこうというくだりは、ちょっと煽りすぎな印象を受けました。そこでそんなに引っ張らなくていいのにー……。

　海底鍾乳洞や、大陸棚にあるらしい遺跡群の話はとても興味深かったです。水の中だと人間ってホントに情報収集能力が落ちるんだなぁ、と思ってしまったりも。海中じゃ、表面をなでるだけでとてもとても発掘作業なんてできないっぽいですし。でもその下に、いろーんなものが埋まっているって面白い話だと思います。
　まだまだ各地の海底遺跡は散発的でつながりを見出しづらく、考古学研究の足しにはなりにくいようですが、大陸棚のどこかにプレ四大河文明遺跡が埋まっているという話は、とても説得力があるように感じました。