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写らなかった戦後(2) の商品レビュー

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2016/11/08

2015年に94歳で亡くなった写真家・福島菊次郎が、子どもの独立を機に瀬戸内海の無人島に入植を試みて奮闘。やがて地主との確執やパートナーとのすれ違い、肉体的な限界によって敗退を余儀なくされるまでの2年を描いたノンフィクション。 晩年の、ある種「ジャーナリズム界で聖人化された“福島...

2015年に94歳で亡くなった写真家・福島菊次郎が、子どもの独立を機に瀬戸内海の無人島に入植を試みて奮闘。やがて地主との確執やパートナーとのすれ違い、肉体的な限界によって敗退を余儀なくされるまでの2年を描いたノンフィクション。 晩年の、ある種「ジャーナリズム界で聖人化された“福島菊次郎”像」しか知らない身にとっては、60代でなお無人島での自給自足を目指した反骨のエネルギーにひたすら驚く。1983年といえば、僕はまだ生まれてすらいない。 文章は硬質で明瞭だが、写真家の書く客観的なそれ……というより、がっつり活動家系ジャーナリストの前のめりな文体。最終的に様々なしがらみによって、無人島入植を断念するのだが、撤退時に家に火を放って自殺しようとしたり、飼い犬に青酸カリを盛って心中図ろうとしたり(いずれも未遂。犬は蘇生)と、かなりやることがハードコア。 とはいえ、右肩上がりイケイケどんどんの時代の日本で、ひたすら「孤高のフォトジャーナリスト」であり続けるためには、常識はずれの異質なモチベーションが必要だったのは間違いなく、カメラのこちら側の「人間・福島菊次郎」を知るにはこれ以上の著作はない。 入植時の準備資金の明細まで記載した異色作。戦後日本における、歪んだ「森の生活(ヘンリー・D・ソロー)」と言えるかもしれない。嫌いじゃないですが、柴犬は大切に。

Posted byブクログ