ベルンハルト短篇集 ふちなし帽 の商品レビュー
短篇集。11篇収録。 冒頭の「ヴィクトル・ハルプナル 冬のメルヘン」は、アンソロジー『現代作家創作童話集』に収められた子ども向け作品とのこと。 医者である語り手が、夜の喬木林で両足のない男に蹴つまづいた、というところから始まる話は、なかなかに強烈。 いかにも善い人らしく振舞って...
短篇集。11篇収録。 冒頭の「ヴィクトル・ハルプナル 冬のメルヘン」は、アンソロジー『現代作家創作童話集』に収められた子ども向け作品とのこと。 医者である語り手が、夜の喬木林で両足のない男に蹴つまづいた、というところから始まる話は、なかなかに強烈。 いかにも善い人らしく振舞っていた語り手の、男と別れて後の「あれ、半バカじゃなかろうか。どうかしてるんじゃなかろうか・・」という底意地の悪い投げ出しっぷりが、子ども受けしそう。 無力感にうちひしがれながらも、ある一つの事柄に関する想念だけがどんどん積み重なっていく・・・というような作品が多く、なんだかこちらまでその重さによろめいてしまいそうになる。 ベルンハルトのファンにはフリークという言葉が似合うという。 そこまでにはなれそうもないが、『消去』と『ヴィトゲンシュタインの甥』は読んでみたいところ。
Posted by
読んでいて、中原昌也を思い出した。いわゆる「生き方が下手」と言われてしまうような人に対する温かい視線がある。表題作でもある「ふちなし帽」が秀逸。
Posted by
落ちとか爽快な読後感はあまりなく、生きることへの馬鹿ばかしさとかがテーマだったりします。が、好きでしょうがありません。寧ろ文体も平易で読み易いのにこういう言い回しもできるか とか、文が重なり進むごとに深まる読み応え感がそれこそ音楽ぽい。
Posted by
- 1