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我心深き底あり の商品レビュー

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2011/08/10

9人の執筆者が西田幾多郎の生涯と思想に関して論じた文章を収録している。西田哲学の内容に踏み込んだ論文もあれば、軽いエッセイ調の文章も含まれている。中には議論の水準に首をかしげる文章もあったが、多くの論考は興味深く読めた。 本書のタイトルは、1923年に西田が詠んだ歌「我心深き底...

9人の執筆者が西田幾多郎の生涯と思想に関して論じた文章を収録している。西田哲学の内容に踏み込んだ論文もあれば、軽いエッセイ調の文章も含まれている。中には議論の水準に首をかしげる文章もあったが、多くの論考は興味深く読めた。 本書のタイトルは、1923年に西田が詠んだ歌「我心深き底あり喜びも憂の波もとどかじと思ふ」から取られている。この歌の3年前に、西田は最愛の長男謙を失った。執筆者の一人である池田善昭は、このときの西田の悲しみに打ちひしがれた親の姿を描いている。 その後も西田の人生は数々の不幸につきまとわれることになる。だが、3年後の「我心深き底あり」の歌には、別の心境が見られる。といってもそれは、単に時間の経過とともに「悲しみ」が薄れたということではない。身を切られるような「悲しみ」は「悲しみ」のままに、「悲しみ」の底へと突き抜けていった心の奥行きが、そこに表現されている。池田は本書の論考の中で、西田の心の「深き底」と、彼の「場所」の思想との関連についても示唆しており、たいへん興味深かった。 そのほか、西田の日記に頻繁に現われる「菓子を禁ず」、あるいは「Don't smoke.」という記述を取り上げた論考もある。偉大な哲学者が、間食や煙草についつい手を伸ばしてしまい、自分の意志の弱さを嘆いている姿は微笑ましい。

Posted byブクログ