森の名人ものがたり の商品レビュー
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「はじめに」に書いてある「人の話を聞くというのはおもしろいものです。人の話にはその人の人生がくっついているのです」という言葉通りの本。 森の名人たちの話し言葉が方言も含めてそのまま綴られており、その端々から、森や自然への慈しみ、そして自分の人生をいかに力強く、誇り高く生きているかがにじみでている。 貴重な技や知恵も満載。炭材として桜、椿、杉、柳、それぞれがどんな灰になるのか、どんな風に燃えるのかや、昔から伝わっている木の切り方や運搬の方法も、知らないことの連続ですごかった。あとは指物師の技術も。時代に逆らえなくて、消えゆくものもあるかもしれないし、後書きで名人が亡くなったことが申し添えてあると切なかったけど、人間だから、いつかは死ぬから、でもこういう形ででも記録されて、そして私はこの本に出会うことができて、よかった。 そのほか印象に残った人と言葉。 □カンジキづくり(北海道黒松内町) 「カンジキをはじめて見たとき、人間と植物とが大自然の教えのなかでともに生きている、共存しているんだなぁという印象を持った。…カンジキづくりは自分の信念としてやっていた」 「田舎のいいところは、自然と解けあいながら、手を結びながら生きていくということ。これはもう素晴らしいことだ。これ以上のことはないと思う。田舎に住んでいて不自由なことはなにひとつない。食べ物は豊富。だから健康。生活には大満足している」 □スギの種採り(奈良県川上村) 「木登りや種採りは、命がけ、いや、なんに対しても命がけ。一生懸命です。それが美しいんやないかな」 □松茸採り(青森県五所川原市) 「松茸がところどころに生えてくるのは機嫌わるいんだよ。環境整備がわるいっていう証拠なんだよ。いっぱいおがれば(はえてくれば)、喜んで笑っている証拠なんだよ。…これも松茸にかける愛情なんだよ」 □竹細工(宮崎県日之影町) 「やっぱ生涯、これ一本でのやっていこうと思っちょるったい。やっぱ好きじゃもんの。竹細工が」 □手橇(てぞり)、木馬=運搬技術(岐阜県飛騨市) 「昔は全部が木材で動いていたから、都会よりも地方の方が豊かだったんや。ストーブとかも全部木やもんで、地方に依存していたんだ。都会の社長よりも、木を切っていた人の方が金持ちだったんやで。…山へ行って仕事をするやろ。そのときに木の陰で昼寝をするねん。熊みたいに寝床をつくって、ご飯を食べて、昼寝をするのよ、涼しいところで。そりゃもう最高の気分になるんや。いい人生だなぁって思うぞ」 □指物(長野県茅野市) 「今どきのつくり方はダメだ。木を無理に使うで、木がかわいそうだ。木の気持ちを考えてやらなきゃ、いい作品もできねえわ…おらの人生を一言で言うと〝無〟だわ。今までおらはがんばってやってきたが、それでも後がつづかなきゃあ、もうなにもなくなっちまうだよ。後の世代へつづいていくのは、作品だけっちゅうことだ…しょうがねえわな。時代が時代だもの」
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