社会分業論 の商品レビュー
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デュルケムは、社会一般における個人のあり方に注目し、自由が諸個人にとって人間性を高める一方で、急速な自由化は社会的不安定を発生させると主張した。社会分業の進展と単一市場への融合、都市化といった時代の趨勢を観察し、「機械的連帯」が支配的な前近代社会から「有機的連帯」が優勢を占める近代社会へと移行する過渡期に出現する病理的な弊害として社会関係の緊張激化、つまり無規範と混乱のアノミー(anomie)が発生すると考えた。これは、近代化に伴って再編された諸勢力の利害・権力関係が十分に調整されていないために衝突が頻発する現象であり、その典型は労使対立である。そのような対立が克服されて社会が安定化するには、諸勢力が頻繁に相互作用を繰り返すことで次第に関係が恒常化し、習慣や規則へと転化していくことが必要である。 このように、社会一般の中で諸個人をどう認識するかという視点は、この時代における社会学の本丸であり、その後は近代化論の土台として、政治学や経済学などあらゆる分野に波及していく。例えばマルクスは、「資本主義イデオロギーの下では生産性は高まるが、労働者は資本家に搾取され続けるため、いずれ社会的不安定が起こる」と主張したし、ウェーバーは、「個人主義的な市場主義はキリスト教にとってはタブーだが、プロテスタントの勤勉さが資本主義の発展に必要不可欠だった」と指摘した。このようにして、彼らは社会における個人の認識に鋭い洞察を与えたのである。
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