1,800円以上の注文で送料無料

その歌声は天にあふれる の商品レビュー

3.7

4件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    2

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/06/22

18世紀の英国を舞台にした物語。行商人オーティスは望まれない赤ん坊を孤児院に連れて行く慈善家として知られていたが、その実は子どもを労働力として売りさばき預かった赤ん坊を殺し、手数料や口止め料を稼ぐ悪党だった。 その息子ミーシャクはからっぽの器と言われ、知恵と感情に乏しかった。ミー...

18世紀の英国を舞台にした物語。行商人オーティスは望まれない赤ん坊を孤児院に連れて行く慈善家として知られていたが、その実は子どもを労働力として売りさばき預かった赤ん坊を殺し、手数料や口止め料を稼ぐ悪党だった。 その息子ミーシャクはからっぽの器と言われ、知恵と感情に乏しかった。ミーシャクが天使と心を寄せる少女が産んだ子を、父親から殺せと言われたミーシャクはその子を抱いて逃亡するのだった。 音楽に魅入られた少年と領主の父親との軋轢と、児童売買の闇を両輪に進む物語。つらい社会情勢が描かれ、その中で必死に生きていく子どもたちの姿があり、そんな子どもらを愛する大人と食い物にする大人が出てきます。 中でもミーシャクが印象深いです。父親からひどい扱いを受け、死んだ子を埋め、その子らの聞こえない声にさいなまれる。 そんなミーシャクが心惹かれた天使。その天使には近づけないけれども、天使の子が自分の腕の中に来た時、ミーシャクは「おいらの天使」を手に入れる。 愛されることのなかったミーシャクが欲したもの。愛する存在と愛してくれる存在。「おいらの天使」を守るために、奪われないためにミーシャクがしたこと。余りにも純粋で、それが故に余りにも自分勝手だとも言えること。 しかし最後に一言ミーシャクに「愛している」と告げてあげて欲しかった。大好きだと笑顔を向けて欲しかった。 様々な人たちの感情と行動が入り交じる群像劇。勧善懲悪の物語でもない、時代の波に呑まれた人々の生き死に。誰に感情移入するかで読後感も変わってくるのでしょう。

Posted byブクログ

2012/11/24

64点。ずっしりと重厚な群像劇。しかも字が細かくページも分厚い。後から反芻して考えられるような本。 いろいろな登場人物が出てくるが、一章とこの物語全体の主人公であるミーシャクは確かにかわいそうな子なのだけど、メリッサのストーカーをしたり、後には彼女の一部でも自分のものとするため子...

64点。ずっしりと重厚な群像劇。しかも字が細かくページも分厚い。後から反芻して考えられるような本。 いろいろな登場人物が出てくるが、一章とこの物語全体の主人公であるミーシャクは確かにかわいそうな子なのだけど、メリッサのストーカーをしたり、後には彼女の一部でも自分のものとするため子どもを誘拐したり(まあ命も助けたけど)と正直気持ち悪い。一章が一番陰惨で読み進め辛い。 二章から普通?の少年の友情が描かれたりと面白くなってきて、読み易くなる。 三章で嵐の前の静けさ的な幸せが描かれ、四章でまたどんでん返し。 個人的に、オチが非常に不満。誰も殺さないハッピーエンドにできなかったのだろうか。 Y.A.って難しい。 登場人物が性交して妊娠するシーンもあるし、ジェントル階級とか当時の(今もかも)イギリスの階級についての説明が訳者あとがきにしかないため、中学生よりは高校生にすすめるのが無難だと思う。

Posted byブクログ

2012/03/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

こどもや赤子の売買、労働状況、貧困、汚職…と言ったテーマを含んだ、18世紀イギリスを舞台にした物語。 多少疑問を感じる部分もあったものの、序盤から中盤は物語に引き込まれた。ただ肝心の終盤は、意図的だろうとは言え切れ切れで、内容もスッキリしなかった。 自らの望みを貫き通せたミューシャクはそれはそれで幸せだったように思うが、トマスのことは残念でならない。 良いやつなのに!わざわざああする必要あったのか?! と、どちらかといえばハッピーエンドが好きな私は作者に言いたい。 結局は悪(という言葉で簡単に片付けるのも違うかも知れないけれど)がのさばったまま、というラストには余韻が残った。 本当の世の中ってのは悲しいかなこういうものなのかも知れない。

Posted byブクログ

2009/10/04

18世紀イギリス。行商人のオーティスは望まれない赤ん坊をロンドンにある捨て子の扶養・教育のためのコーラム養育院に連れて行く慈善の仲買人として知られていた。だが、オーティスには恐ろしい裏の顔があったのである。預かった赤ん坊は見殺しにし道端に埋め、働き手となりそうな年頃の子どもたちを...

18世紀イギリス。行商人のオーティスは望まれない赤ん坊をロンドンにある捨て子の扶養・教育のためのコーラム養育院に連れて行く慈善の仲買人として知られていた。だが、オーティスには恐ろしい裏の顔があったのである。預かった赤ん坊は見殺しにし道端に埋め、働き手となりそうな年頃の子どもたちを売り買いするという金目当ての残忍な商売に手を染めていたのだ。 オーティスと少々頭の弱い息子ミーシャクは、アッシュブルックの領地で領主の息子アレクサンダーと、ともに音楽家になる夢を追う少年トマス、アレクサンダーの妹イザベルとその家庭教師の娘メリッサと出会う。ミーシャクはメリッサに心を寄せ、いつも影から見守っていたのだが、メリッサはアレクサンダーと惹かれあっていた。 やがてメリッサがある秘密を抱えた時、彼らの運命にオーティスの影が忍び寄ってきて…。 それぞれの愛と友情、野心、思惑が複雑に絡み合って、やがて一箇所に収束されていく。 作中の人物たちが解いていく秘密と謎は、読者にはすぐに答えの推測ができるように提示されていくのだけれど、途中で飽きさせることなく読ませる作品になっている。史実も絡めて描かれた作品は子どもの命が軽く扱われていた事実と親の痛切な願いが響いてきて、読み応えがありました。 様々な人物の視点から幾度も物語が語り直され、心情が吐露されるので、冗長な印象も多少あったけれど。 大好きな人との子どもを手放すのはどれだけ辛いんだろうと思う反面、14・5歳の自分自身が子どもといってよい年齢の少年少女に、生まれてくる赤ちゃんに小さくてかわいいものに対する愛情ではなく親としての愛情が湧いてくるものなんだろうかと疑問にも思いました。 アレクサンダーとメリッサは離れ離れになるかもしれないという恐れから、お互いに対する気持ちを打ち明けあい抱き合っているうちになにが起こっているのかわからないまま関係を持つことになるのだけれど、そのことに対してなんの知識もない、身体も成熟してない少年と少女が結ばれたというのにも、周りの人間のほとんどに妊娠を隠し通して子どもを産んだというのにも、どうも真実味がないなと思ってしまった。 結末はある程度予測できるので、読後は重厚で神妙な気分と、そこまで書かかずに余韻を残しておいてもよかったのにという倦怠感のないまぜになった複雑な気分でした。 雰囲気はすごく出ている作品だと思うので、こういう雰囲気が好きな人にはとっても好きな作品なんだろうなと思います。 2007/01/20

Posted byブクログ