アジア・太平洋高等教育の未来像 の商品レビュー
高等教育の興味の対象は、欧米が中心になりがちであったが、先般の半期の授業を受けて考え方を改めた。 実は政策や大学の類型等を比較すると、現在ないし近い将来の課題に対して、示唆する点が多い。本書では、東アジア特に中韓とオーストラリアの高等教育を扱っている。 規模の面では、資源国の特...
高等教育の興味の対象は、欧米が中心になりがちであったが、先般の半期の授業を受けて考え方を改めた。 実は政策や大学の類型等を比較すると、現在ないし近い将来の課題に対して、示唆する点が多い。本書では、東アジア特に中韓とオーストラリアの高等教育を扱っている。 規模の面では、資源国の特徴を生かして産業を急速に発展させた中国・オーストラリアが、アジア・オセアニアの高等教育を牽引している。しかし両国の制度は異なり、中国の高等教育システムは、日本のそれを参考に、ソ連や欧米の仕組みを取り入れていれているのに対し、オーストラリアはほとんどが国立大というイギリスに似た形になっている。産業と高等教育の連動は、日本の明治から昭和にかけての歴史を見てもわかるとおり密接な関係がある。特に中国の加速の度合いは大衆化と高度化を併進している。 共通していることは、各国ともにグローバル化戦略をとっていることだ。その視点は以下の4つを見ることができる。 1.人材観の転換(国際競争力のある高度な人材育成)、 2.国立大の法人化と質保証のセット 3.COEに注力し研究大学の側面も強化 4.アジア域内学生の流動化 これだけ見ても、他のアジアの国々の大学と欧米の大学の関係の取り方は、見習うべき点が多い。いずれの政策も予算も含めてかなり戦略的に進められている。 お隣の韓国は、戦後、基本的にアメリカの方式が取り入れられた。7年周期の評価は1994年から始まり、今は3サイクル目に入っているはずである。高等教育就学率が、8割を超えているにもかかわらずこの質保証の仕組みがそれを支えている。なお、就学率の計算には「専門大学」も入っている。 しかし、18歳人口の減少は日本より早くその問題に対処しているところだ。就職第一主義の風潮があり、実業系の大学にニーズがある。人文科学・芸術はその逆だ。高等教育と産業界の労働力の需給関係により、教育プログラムの注文がなされる状況は、日本とよく似ている。 中国のCOEは、採択条件に実績のある外国の学者を参加させることを入れている。シンガポールは「東洋のボストン構想」で産学官連携を進めたり、ワールドクラス大学との提携を実施している。何れも日本は遅れをとっていると言わざるを得ない。 やはり日本で高等教育を受けるには、日本語能力の問題が大きく、グローバル30もなかなか遅々として進まないのが現状か。特に優秀なアジアの学生は欧米・カナダ・オーストラリアに行く。 マレーシアは、電話、郵便、鉄道、社会インフラの民営化が1980年ごろから推進された。大学の民営化は日本の法人化よりもっと、市場原理にさられることになっている。 一番おもしろいなと思ったのはトゥイニングプログラム。マレーシアで2年間教養科目を学習し、その後外国の大学で所定の課程を経て2つの学位を得る仕組み。「外部学位プログラム」「フランチャイズ学位」コースといった制度もある。名板貸しみたいだな。
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