1,800円以上の注文で送料無料

東大法学部 の商品レビュー

3.1

15件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    5

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2009/12/11

 東大法学部の歴史と、それに関係する政財官界の人脈、さらに彼らの業績(所業というべきものもあるが)などの基本データが充実していて、日本における東京大学の位置づけがとてもわかりやすい。  その反面、著者独自の主張となると、やや物足りない。  主な論点は、国家中枢への人材供給源と...

 東大法学部の歴史と、それに関係する政財官界の人脈、さらに彼らの業績(所業というべきものもあるが)などの基本データが充実していて、日本における東京大学の位置づけがとてもわかりやすい。  その反面、著者独自の主張となると、やや物足りない。  主な論点は、国家中枢への人材供給源としての東大法学部の終焉と、それに伴う法学部の学生の劣化である。この論自体は、今となっては(多分、この本が出版された2005年当時でも)めずらしい話ではないように思う。  東大法学部出の官僚の堕落、市場主義者的な東大生への違和感、予備校化した東大のありようなど、東大を取り巻く現状に対して、さまざまな疑問が提示されているが、要は 「公共に尽くす考えのない東大生(含む教授)のために、実質的に国立大学である東大に、多額な国民の税金をつぎこむのはおかしいいだろ!」 ということなのだろう。  そんな東大生は「エリート」ではない、ということで、じゃあ真の「エリート」とはどんなものかというと「ノブレス・オブリージュ」のお話で何となくお茶をにごされた感があり、また、エリートの育成法についても、具体的には奨学金の充実というくらい。  旧制一高について書かれたあたりを読む限りでは、著者に「エリート教育」について熱い思いがあるように感じたので、拍子抜けな感は否めない。   これからの日本には、誰が何といおうとエリート層が必要だと思っている自分としては、そのあり方と育成方法について非常に興味があったのだが……。  実際問題、いわゆる優秀な高校生の進学先が東大以外の海外の大学にも広がっているとはいえ、人数的にも制度的にも、とても、それらがメジャーになっているとは言える状況ではない。なんだかんだいっても、優秀な日本人の子供は、どうしても東大を目指してしまうのだ。ならば、ここは腰をすえて、東大を真のエリート養成機関として再構築する方が近道なのではないだろうか。  著者も、とうの昔に賞味期限切れとなった、現在の東大(および、それを頂点とするシステム)に対しては厳しい姿勢をとっているものの、「東大」的なものを否定しているわけではない。  今度はぜひ、東大のリストラクチュアリングについて論じてほしいと思う。

Posted byブクログ

2009/10/04

 官僚の士気が下がるのは権限をとられちゃったからだとある。  「裁量権をせばめられた官僚たちのやる気は、徐々に減退し、朽ちてゆく。モラール(士気)の低下である。腐敗官僚の増加は(中略)最大の原因は使命感と緊張感の喪失にあったというべきであろう」(p.92)  まあ、生涯一プレ...

 官僚の士気が下がるのは権限をとられちゃったからだとある。  「裁量権をせばめられた官僚たちのやる気は、徐々に減退し、朽ちてゆく。モラール(士気)の低下である。腐敗官僚の増加は(中略)最大の原因は使命感と緊張感の喪失にあったというべきであろう」(p.92)  まあ、生涯一プレーヤーの身としては、それでも問題を求めて荒野を行かなければならないと思っています。だって解決能力を発揮したいわけですよ。職業倫理みたいなものですね。  「真の教養とは(中略)問題を発見する力を備えているということだ」(p.176)そうなんだよなあ。ここが問題だ、と。で、解決への筋道も持っているともっといいですよね。  それにしても…  QCのもとが原価計算だったとは初めて知った。「昭和十三年制定の『国家総動員法』にもとづき、『軍需品工場事業場検査令』なるものが公布され、軍需物資を生産する民間の事業主に(1)原価計算をさせ、(2)その結果を報告させ、(3)担当官を派遣して監査する−ことになったからであった」(p.80)「戦後、米国から『品質管理』の手法が導入され、日本企業の成長を内側から支えるシステムとなったが、その前にこの原価計算の土台があったからこそ、見事な花を咲かせたと言っていい」(p.81)  そうであったのか。本題よりもこの話が俄然光彩を放っている。

Posted byブクログ

2009/10/04

東大法学部の歴史と存在意義を批判的に描いています。東大法学部はそもそも、日本の法律を整え、近代化させていく上で必要不可欠だった法律職行政官を大量に生産する目的で国が設置したものだった。それが現在では東大法学部の学生はその多くが裁判官や弁護士、外資系企業をはじめとする民間企業を流れ...

東大法学部の歴史と存在意義を批判的に描いています。東大法学部はそもそも、日本の法律を整え、近代化させていく上で必要不可欠だった法律職行政官を大量に生産する目的で国が設置したものだった。それが現在では東大法学部の学生はその多くが裁判官や弁護士、外資系企業をはじめとする民間企業を流れ、その役割は変容しつつある。と著者は分析します。「東大法学部のブランドはかつてに比べるまでもなく色あせ、大貯水池からは民間に直接流れるものや、官界に入っても失望して民間に転進する者が増えていった。」「エリート輩出構造は、東大法学部を頂点とする富士山型から、あちこちに峰のある八ヶ岳型に変わっていくだろう。あるいはいくつものピークのある万里の長城型と言ってもいいかもしれない。なぜか、それは多様性がこれからの社会の青写真を描くうえでのキーワードとなるからである。」大前研一氏と同じことを言っているので驚きました。本書は東大のことばかりでなく、東大法学部と切っても切れない関係にある霞ヶ関のことも詳しく描写しており、とても勉強になりました。新潟の農家出身で学歴のない田中角栄と、ピカピカの東大法卒の福田赳夫の「角福戦争」の引用は印象的でした。でもやっぱり東大は憧れますね。そもそもこの本を手にとったのも東大コンプレックスの現れかも。。。

Posted byブクログ

2009/10/04

1つ1つの題の長さが短く、非常によみやすかったです。 東京大学法学部の歴史などを詳しく知る事ができ楽しめました。

Posted byブクログ

2009/10/07

こうもまぁ、世間の偏見に迎合、助長するような著作は見上げたものだ。 官僚離れ、外資志向の増加という指摘はまっとうだろう。 しかし、エリート排出機関としての東大の機能低下、存在意義に対する懸念はどうかと思う。 勿論昔に比べて様々な点で卓越性、優位性が失われているかもしれないが、だか...

こうもまぁ、世間の偏見に迎合、助長するような著作は見上げたものだ。 官僚離れ、外資志向の増加という指摘はまっとうだろう。 しかし、エリート排出機関としての東大の機能低下、存在意義に対する懸念はどうかと思う。 勿論昔に比べて様々な点で卓越性、優位性が失われているかもしれないが、だからといってそのほかの大学が成長しているとも思わない。 25番の教室構成等、嘘の記述も存在するのでこの本自体の信憑性が疑わしくなる。森田朗が怒るのもむりからぬ。 内部にいる人間にとっては、あんまり耳障りのいい話ではないですね。

Posted byブクログ