剣の道殺人事件・フェニックスの弔鐘 の商品レビュー

鳥羽亮(著者),阿部陽一(著者),日本推理作家協会(編者)

江戸川乱歩賞を受賞し…

[文庫ＯＦＦ]

江戸川乱歩賞を受賞した作品2つを一つの本にまとめたお得な本。おすすめは「剣の道殺人事件」。トリックが冴えます。

2018/09/22

剣の道殺人事件/鳥羽亮：第３６回大賞受賞。１９９１年
剣道の試合中に殺された。一番近くにいた対戦相手が疑われるが、関係者は否定。そんな気持ちで試合に臨めば、わかるって。衆人環視の中でどうやって？そして、兄、異母弟が殺される。息子三人に、違う技を覚えさせた秩父の大富豪。剣を交えるだけで、性格がわかるんだ。でも、スポーツって性格でるね。すがすがしく、剣道の世界を堪能。やらないし知らないんだけど。
衆人環視の中でどうやって？　は、あーそりゃそうだ、と納得。そして、犯人の自決。武士道になってる。剣の道だから、そうだよね。
この前あたりから、評者の態度が問題となってる。せっかく受賞したのに、けなすとかね。
剣道をうまいこと使った、密室殺人だと思う。

フェニックスの弔鐘/阿部陽一：第３６回大賞受賞。１９９１年
登場人物、ほとんど欧米人。中東で監禁拷問された過去を持つ主人公アメリカ人。そのエリート兄が殺された。ゴルバチョフが出てきて、共産主義が崩れた頃の話。
正義対悪でなく、どちらも正義だと信じて戦う話。東側がなくなったあたりから、正義と悪の切り分けが難しくなったね。ただし、この小説では、ナイトは狂信的な悪だよ。フーバーはそんなに偉いのか。
これで乱歩賞を取りに行ったのが謎。エスピオナージュだし、もちろん良質だと思うけど、ミステリーじゃない。
思うに、乱歩賞落選した新本格作家たちが売れちゃって、低迷期だったのかなあ・・などと思う。でも、選ばれた小説自体は、アタリだと思うんだわ。

2010/07/14

江戸川乱歩賞
(収録作品)｢剣の道殺人事件｣鳥羽亮(1990/36回)／｢フェニックスの弔鐘｣阿部陽一(1990/36回)