書 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
書を性格づけるのに「筆蝕」の表現と言う造語をあてる著者。青銅器や石に刻む、竹簡や紙に筆で触る、その間の相克、統一を通して書は生まれたからだ。それゆえ書は黒と白の対比の表現ではなく、光と陰による表現なのだ。筆尖-ひっせん-を通じて書家は対象に力を加え、対象から反発する力が返る。それをねじ伏せたり、折り合いをつけたり、微妙に震えたり、スーッと逃げたり‥、そういうドラマを、さまざまな古今の名書にもとづき、西洋音楽の楽典に匹敵するような分析で、書の美が解かれ、説かれゆく。書はまた個人の精神的営為でもあるからして、確立した規範からの揺らぎ、崩しが必ず生ずる。それがまた新たな規範となるのは、何らかの革新的な思想性、技術を含んでいるからだ。楷書が「軟書化」していく唐以降の狂草-きょうそう-や、空海が日本にもたらした雑書体について、そうした構造が解き明かされる。「書の宇宙」と題され、01年から02年にかけ、京都精華大で開かれた連続講座、12回の講義録。 -20100131
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文字を書くことは天地を仮構することであり、それによって人は絶えず天を意識して書き進めることになる。五体の範となるような中国や日本の名品を例に挙げながら「書く」という行為の根源に迫るところがあって大変すばらしい内容だった。
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