静かな暴走 独立行政法人 の商品レビュー
世間でこれだけ大騒ぎしているのだから、本屋には独立行政法人に関する本が山積み状態なのかというと、そうでもない。独立行政法人共通のルールである通則法や会計基準についての解説書はあるのだけど(これは実用書ですな。)、法人について厳しく切り込むような本はあまりない。 その中の一つが...
世間でこれだけ大騒ぎしているのだから、本屋には独立行政法人に関する本が山積み状態なのかというと、そうでもない。独立行政法人共通のルールである通則法や会計基準についての解説書はあるのだけど(これは実用書ですな。)、法人について厳しく切り込むような本はあまりない。 その中の一つが「静かな暴走」(北沢栄著) 著者の北沢氏はジャーナリスト出身で、今までも公的セクターの分析活動を行ってきたかた。氏のサイト「殴り込む」 http://www.the-naguri.com/ では、いろいろな事例をわかりやすく紹介。 本書はそのような北沢氏だからこそ書くことができたものであろう。今から見れば内容はやや古くなっているが、独法制度発足の経緯から、その発展状況、個別具体的な問題事例、そしてなぜそうなってしまうのかにつき、鋭く考察。 メディアはややもするとおもしろおかしい事例を取り上げて表面的に馬鹿にするだけで終わってしまいがちなのだが、本書では、なぜ公的セクターで世間常識に反することが起きてしまうのかという、そもそも論を取り上げて分析。筆者によれば、結局は官僚の個人責任を追求する仕組みが不備であるのが問題ということのようで、確かにそのような議論は最近よく聞かれるところ。 自分が思うには、官僚の個人責任をあまり厳しく追及すると、リスクが高すぎる職業になってしまい、人材確保ができなくなってしまうのではないかという危惧もあるけれど、他方、株式会社の取締役が株主代表訴訟、公的セクターの中でも地方自治体は住民訴訟といった形で責任追求の道が設けられていることとのバランスから見れば、責任に合理的な上限(例えば給与の○倍といった)を設けた上での個人責任追求の制度はあっても良いのかな、と。でも、制度濫用のおそれがすごく高いので、よっぽど慎重にやらないと。 それにしても、「静かな暴走」というタイトルはなかなかのセンスではないかしら。
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