チェーホフとの恋 の商品レビュー
アントン・チェーホフがいかに罪作りな男かと証明する1作だった。 はじめは、チェーホフとの特別な恋愛を彼の死後に独りよがりに語ってるのかなぁと思った。 チェーホフと会ったときリディアは夫も子どももいたのだが、チェーホフに恋をする。でもリディアは家庭を捨てることなんか出来ないしチェ...
アントン・チェーホフがいかに罪作りな男かと証明する1作だった。 はじめは、チェーホフとの特別な恋愛を彼の死後に独りよがりに語ってるのかなぁと思った。 チェーホフと会ったときリディアは夫も子どももいたのだが、チェーホフに恋をする。でもリディアは家庭を捨てることなんか出来ないしチェーホフも結婚に向かない男だ。 チェーホフがリディアに作家の仕事とはどういうことかを語るところには彼の誠実さがある。恋愛には罪深き彼であってもやはりすごい。 しかしそれでもそこには10年の交際があったリディアにしかわからないチェーホフがいる。彼女でさえもわからないことがあってもそれは当たり前だろう。 終始、チェーホフ作品を読んでるような気持ちになる。 「かもめ」の有名な場面、ニーナがトリゴーリンにメッセージを刻んだメダルを贈る、 本のページと行で知らせるあの場面の元ネタ まじめに恋してると絶望するだろう。 訳文がすんなり読めないのが残念だが、チェーホフゆかりの写真が貴重でうれしい。ワルワラ・ブブノワのひと筆書きのようなスケッチがチェーホフはよくとらえてるようだが『華麗な女』と彼に表現されたリディア・アヴィーロワの魅力が伝わってこないのが残念。 もっとも強く心に残るのはリディアの兄、アレクセイだ、妹思いでさばけた人がらの彼はなんどもチェーホフと妹の間をとりもってやる粋な男だ 彼こそ物語を書くべきだったろう。 解説にある訳者小野俊一の人生がかなりドラマチックだった。
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