鬼を斬る の商品レビュー
落ち着き払った松陰の姿を見て、この男は罪人ではないと、吉利は確信した。でも、重罪か無罪か、それを判断する立場になく、首斬り浅右衛門の使命は土壇場の罪人の首を打つことだけ。何かいい遺すことがありましょうか。そこもとが山田浅右衛門どのでござろうか。いかにも。ご配慮、かたじけのうござる...
落ち着き払った松陰の姿を見て、この男は罪人ではないと、吉利は確信した。でも、重罪か無罪か、それを判断する立場になく、首斬り浅右衛門の使命は土壇場の罪人の首を打つことだけ。何かいい遺すことがありましょうか。そこもとが山田浅右衛門どのでござろうか。いかにも。ご配慮、かたじけのうござる。・・・されば・・・ 「親思ふ 心にまさる親心 けふのおとずれ 何と聞くらむ」と、ちいさな声で詠んだ。一心に松陰の西方浄土を念じながら、吉利は、己のすべてを込めた涅槃斬りを。
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小説「斬」の関係から読む。斬は明治維新の激動期の物語だったが、この本はその手前の時代を描いている。江戸が終わろうとしている時、斬首は普通に執行されていた。政治犯も強盗や殺人犯も首切り浅右衛門から首を斬られたのだ。死刑制度はこの制度のおかげで大量の死刑者を出さずにおれた。
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