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残光のなかで の商品レビュー

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現代日本語散文の名手…

現代日本語散文の名手が見つめてきた人々、日々を優しいユーモアで描く。

文庫OFF

2021/05/03

柔らかく優しい文章で心に沁みる短編8選です。 著者は元京大教授でフランス文学者です。パリには3度都合3年以上滞在し滞在時の小説(散文)の著書が多く出版されて居ります。 この小説は文章が柔らかく読む者にすっと入って来るギラギラした飾り立てのない簡素で優しい調子が全編共に感じられ...

柔らかく優しい文章で心に沁みる短編8選です。 著者は元京大教授でフランス文学者です。パリには3度都合3年以上滞在し滞在時の小説(散文)の著書が多く出版されて居ります。 この小説は文章が柔らかく読む者にすっと入って来るギラギラした飾り立てのない簡素で優しい調子が全編共に感じられます。 ”残光のなかで”:モンマルトルの墓地にゾラの墓を訪ね守衛に墓の場所を尋ねると彼はバカンスに出ているとの粋な返事に著者は愉快で爽快な気分に浸る。 ”メルシー”:コーマルタン街のアパートに滞在している間毎朝フランスパンを近所のパン屋へ買いに出掛けるがそこの女将が馴染み客になっているのに挨拶もしてくれない無愛想さに腹を立てる。 たった一言のメルシーを聞きたい為に悶々とする孤独な日本人の気持ち。 ”糺の森”:軍需工場でたまたま同じ作業担当となった女性”ネズミ”を思い続けるが終戦と共にそれぞれの生活で音信不通に、再び糺の森で偶然の再会をする。そんな30年以上も前の淡い記憶を50歳になった自分は診療所で治療を受けながら目を閉じネズミを思い出す。 どの編でも時間・場所・人物・風景がはっきりと目に浮かび静かに語りかけてくる作品です。

Posted byブクログ

2011/09/18

再読。「メルシー」の無愛想なパン屋のおばさんが懐かしい。若い日のフランス留学時代、「言語的飢餓状態」ともいうべき孤独感に陥り、「書くことはほとんど生理的な必要だった。書きながらわたしの身体はふるえた」と後書きにあった。簡素で軽やかな文体を生んだ孤独。

Posted byブクログ