異国の客 の商品レビュー
政治や文化、文学や人生をめぐって良きにつけ悪しきにつけ実に冷徹かつおだやかに筆は運ばれる。ぼく自身も含めて、政治的なトピックを語る際はともすれば情念をむき出しにして・敵対心丸出しの姿勢になりがちだ。だが池澤の場合は言うべきところにNOと言いつつ、最大限の譲歩を行うフェアネスを貫こ...
政治や文化、文学や人生をめぐって良きにつけ悪しきにつけ実に冷徹かつおだやかに筆は運ばれる。ぼく自身も含めて、政治的なトピックを語る際はともすれば情念をむき出しにして・敵対心丸出しの姿勢になりがちだ。だが池澤の場合は言うべきところにNOと言いつつ、最大限の譲歩を行うフェアネスを貫こうとする姿勢が頼もしい(だがそれが故に、彼の姿勢は優等生的な高みから立った態度とも受け取れる。「譲歩」なんてのは「エリート」「インテリ」の所作とも解釈できるからだ)。ここまで果敢に「物申す」危険を冒すその動機はどこにあるのだろう?
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※このレビューにはネタバレを含みます
異国の客 池澤夏樹氏が異国の客として居を構えているフランス フォンテーヌブローからの月に一度のエッセイ通信。 何故通信かというと、日本の読者に向けてのメッセージが含まれているからです。EUの理念、イラクでの人質事件への考察、全体と個の考察、宗教、デモ。。。 出来るだけ日本との違い指摘するのではなく記したと書かれていますが、日本人である池澤氏の目を通したこと自体が比較論となっています。竹蔵は池澤氏のフィルタが好ましく思われます。 いろいろなことに”そーだよなー”と思い、竹蔵が言いたいことはこういうことなんだよ!と思ってしまいます。でも良く考えると、言いたいことが同じなのか?池澤氏が言っていることに賛同しているのか?よくわからなくなって来ました。それ以前に話題の選び方自体が好きなので、多分後者なんだと思います。 今興味を持っている地球温暖化の問題も、思えば「楽しい終末」あたりの影響だったかな? 海に囲まれ同一民族同一思考がはびこり易い、日本という特別な国で暮らしている竹蔵は、別の視点にはっとすることや、別の意見を敢えて表明することを心がけていきたいと思います。 竹蔵
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文庫でも出ているのは知っていたが、装丁の美しさでこちらを読む。 文字の大きさも心地よく、上製本にも関わらず軽く、開きやすいスクエアに近いサイズ。 (装画=名嶋憲児 ブックデザイン=守先正) 内容も、読み込むとかなり重い内容に関わらず、海外に本格的に暮らし始めた彼のよい意味で少...
文庫でも出ているのは知っていたが、装丁の美しさでこちらを読む。 文字の大きさも心地よく、上製本にも関わらず軽く、開きやすいスクエアに近いサイズ。 (装画=名嶋憲児 ブックデザイン=守先正) 内容も、読み込むとかなり重い内容に関わらず、海外に本格的に暮らし始めた彼のよい意味で少し浮ついた気持ちと、日本という国を少し遠巻きに眺めていられる状況を楽しんでいるような文体が素直に入ってきた。雑誌の連載をまとめたものということもあり、リアルタイムな状況設定もよい方向に働いているように思う。 『「ヨーロッパの殺害されたユダヤ人のためのメモリアル」』の話は印象的だ。ドイツのレナータ・シュティーとフリーダ・シュノックの、赤いバスのプランはこれこそがアートだと思わされる、目の覚めるようなアイデアだと思った。 最終的には別のプランが採用されたようなので、その案を見に、ベルリンに行きたいと思う。 この雑誌の連載は続いていて、続編もまとめられているようなので読んでみよう。
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雪遊びに興じるどこかの奥様や、市場、学校などの描写が好もしい。 食べ物が美味しそうだ。 トレランスということばが印象的。
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興味深く読みました。 池澤さんがフォンテーヌブローにご家族で住んで、そこから見たり聞いたり考えたりしたことが綴られる。日本のことフランスのこと、アメリカのことEUのこと、歴史のこと、政治情勢のこと、食べ物のこと、宗教のこと、色々、色々。 2004年~2005年の話題なので、こち...
興味深く読みました。 池澤さんがフォンテーヌブローにご家族で住んで、そこから見たり聞いたり考えたりしたことが綴られる。日本のことフランスのこと、アメリカのことEUのこと、歴史のこと、政治情勢のこと、食べ物のこと、宗教のこと、色々、色々。 2004年~2005年の話題なので、こちらは2012年の日本において、ああこんなことあったね、と思いながら読むわけですが。 ヨーロッパの記憶装置というのが印象的だった。 P145~146 「同じくドイツのレナータ・シュティーとフリーダー・シュノックの案では提供された土地をバスの発着場にする。「バスの目的地は、ドイツ国内およびヨーロッパ各地に点在しているかつての収容所跡で、いずれもノンストップの直行便でスケジュールにきちんとしたがって運行される。バスは鮮やかな赤で塗装され、その前面にはアウシュヴィッツやトレブリンカといった地名が行き先表示として大きく提示される。その禍々しい固有名を戴いたまま、合計80台近くの真赤なバスがベルリンの街中を行き来するのだ」。 赤いバスのメッセージは要するに、「忘れるな!」ということだ。見るたびに思い出せということだ。見る機会を増やすために赤い色に塗って毎日運行する。忘れてはいけないことがあり、そのために記念碑が作られる。最も能動的な記念碑として、赤いバスが普通のバスに混じって動きまわる。 誰か日本で「従軍慰安婦」の記念碑の過激な案を提供しないだろうか。 今なら、「原発」の記念碑がほしいところだ。まさに忘れるな!である。 ところで池澤さんって再婚して小学生のお子さん(当時)が二人おられるのね…。
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フォンテーヌブローにくらしながら感じたことからさまざまなことに広がる話。おいしいホワイトアスパラガスやめずらしい茸が手に入るマルシェの近くに住むこともとてもたいせつなことだ。 さとこ
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フランス移住にまつわる四方山話。 一箇所に留まり続けると、やがてどこかに行きたいという衝動が湧きあがる。それを感じながらも旅行で紛らわす人が大勢だと思うが、著者はそれを行動に移す人物だ。その根底には強い好奇心があり、移住に限らず全ての事柄についての好奇心を張り巡らせている。 冬...
フランス移住にまつわる四方山話。 一箇所に留まり続けると、やがてどこかに行きたいという衝動が湧きあがる。それを感じながらも旅行で紛らわす人が大勢だと思うが、著者はそれを行動に移す人物だ。その根底には強い好奇心があり、移住に限らず全ての事柄についての好奇心を張り巡らせている。 冬だけ訪れるペットのような暖炉、夏時間の効用、アメリカ政権への批評、EUという組織にまつわる色々、など日常から国際情勢まで著者の意見は多岐に渡る。 イラク戦争やアメリカ政権への批評には結構熱が入っているが、これも一人の人間のエッセイなのだからそういう事もあるだろう。 著者が特に印象深かったのは他者との交流とデモだろう。 他者を他者と認めた上で、自分達の文化を説明する―Toleranceが日本語になりにくい相互理解の観念であると述べ、それを重要に思っている。 デモはフランスの風物詩のようなものだが、それが時には政策を変えてしまう。これは日本ではなかなかない事だと述べ、何度かデモについて触れているが、結局のところ「デモの高揚感が好きなだけかもしれない」、という一文が一番共感できた。 宗教に近い場所にいるが一つの宗教に入信しない無神論者を語る著者の宗教論も興味深い。 神は人々から近くて遠い存在であり、その間を仲介するのがキリストであり、聖母マリアであり、聖者や法王・司祭・司教である。抽象の神を愛するために彼らの存在があるのだと。 異国の客は外にいるがために、より故郷を思うものだ。
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外国に行けば私たち日本人も「外国人」として見られる。。そしてその外国から日本をみた時に感じた事の数々が書かれていてフランスに暮らす池澤さんが日々の暮らしの中で感じた様々なことを書いたもの♪
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