紙つぶて の商品レビュー
著者の谷沢永一氏は保守論客として知られたが、本業はあくまで文芸評論家・書誌学者である。本書は谷沢氏が1969~83年に新聞等に発表した辛口書評コラム455本それぞれに、追記を施したもの。つまり、合計910本になるが、コラムは600字、追記は500字なので、見開き2ページに1本が収...
著者の谷沢永一氏は保守論客として知られたが、本業はあくまで文芸評論家・書誌学者である。本書は谷沢氏が1969~83年に新聞等に発表した辛口書評コラム455本それぞれに、追記を施したもの。つまり、合計910本になるが、コラムは600字、追記は500字なので、見開き2ページに1本が収まる構成になっている。取り上げる本や話題は日本文学や社会風俗に関するものが多い印象(後になるほど、政治的な発言も目立ち始める)だが、それでもこんなにたくさんの本が世の中にあるということに、圧倒される。 一方で、本書全体に一貫しているのは、適当な印象批評や学閥の権威主義には厳しく批判する反面で(つまり、イイカゲンなものが許せない)、綿密な調査や考証に基づいた作品は率直に高く評価したことだろう。たとえば谷沢は、全国の高校文芸部の同人誌にも優れた研究があることを紹介し、「若い芽の成長に期待」と声援を送る。紹介された学生たちは、さぞや嬉しかったのではないだろうか。
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この読書量と批評に驚け この本の原型で、少数部数しか発行されず知る人ぞ知る本だった『署名のある紙礫 私の書物随筆』(浪速書林 1974)を知人(かなり年上)から借りて読んで、私は、あまりにすごい読書量と歯に衣を着せぬ批評に驚いた。 たちまちファンとなり、借りた本だったので、要...
この読書量と批評に驚け この本の原型で、少数部数しか発行されず知る人ぞ知る本だった『署名のある紙礫 私の書物随筆』(浪速書林 1974)を知人(かなり年上)から借りて読んで、私は、あまりにすごい読書量と歯に衣を着せぬ批評に驚いた。 たちまちファンとなり、借りた本だったので、要点と参考文献をノートに書き写した。 読むべき本は一杯あると実感された。 1978年に『完本 紙つぶて』となり、自註を入れて、この「最終版」として完結した。読書エッセイの金字塔である。
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