遣唐使の見た中国と日本 の商品レビュー
2005年発行、朝日新聞社の単行本。24編。私としては墓誌の内容の議論よりも、時代背景の解説の方が興味深かった。ただ、一介の留学生に過ぎない人物がなぜ尚衣奉御が贈られたりしたのかは、解明される可能性は薄いかもしれないが、議論する価値のあることなのかもしれない。 執筆者(巻末資料...
2005年発行、朝日新聞社の単行本。24編。私としては墓誌の内容の議論よりも、時代背景の解説の方が興味深かった。ただ、一介の留学生に過ぎない人物がなぜ尚衣奉御が贈られたりしたのかは、解明される可能性は薄いかもしれないが、議論する価値のあることなのかもしれない。 執筆者(巻末資料より):荒木敏夫、池田温、岩見清裕、王維坤、王維新、加藤謙吉、賈麦明、亀井明徳、氣賀澤保規、厳基珠、佐伯有清、酒寄雅志、鈴木靖民、石暁軍、高橋継男、土屋昌明、東野治之、礪波護、方光華、松原朗、矢野建一、山田智、
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遣唐使(第九次と解されている)に加わった井真成の墓誌が中国で発見された。本書は、日中の多数の研究者が、その墓誌を解読し、当時遣唐使となった渡海者の在りようについて分析を加える。多数の論文の集積で、見解の対立も、未整理のまま載せられているので、かなり混乱する。また、そもそも墓誌に刻まれた情報自体多くなく、他方、誰かを特定する材料が日本側にも乏しいこともあって、期待した遣唐使の実像解読には程遠い。それは、墓誌が出来るほどには重用されたが、詳細なものが出来るほど重んじられたわけではなかったことのようである。 まぁ、日本という国号が8世紀初頭には、中国でも用いられていた最古の確実な物証ということに意味があろうか(他は後代の写本や引用のため)。2005年刊行。 補足。渤海や新羅の遣唐使派遣は、日本のそれとは比較にならないくらい多数回かつ多人数による。また、科挙に臨んだ留学生も多い(もちろん合格率は極少だが、留学生だからというのではないかも)。また、日朝の文化的・制度的差異が顕著になってきたのは、中国との公的関係が事実上切断された9世紀半ばを嚆矢とするという見方に注目したい。
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