徒然草の京都を歩く の商品レビュー
好きな古典の五本の指に入る兼好法師の『徒然草』。 仁和寺も、石清水八幡宮も、徒然草を読んだからこそ、興味を持って参拝した場所なので、徒然草に登場する京都について更に知りたいと呼んでみました。 うすうす感じてはいましたが、兼好は僧侶であっても、かなりフットワークが軽く、あちこちを...
好きな古典の五本の指に入る兼好法師の『徒然草』。 仁和寺も、石清水八幡宮も、徒然草を読んだからこそ、興味を持って参拝した場所なので、徒然草に登場する京都について更に知りたいと呼んでみました。 うすうす感じてはいましたが、兼好は僧侶であっても、かなりフットワークが軽く、あちこちを訪れ、幅広い見聞を得ていることがうかがい知れます。 仏事の専門的な行についてはあまり語られず、むしろ俗世間の話や、僧侶を俗的な視線から語るエピソードが多く掲載されているため、親しみやすさを感じるのです。 後二条天皇の蔵人として誉れある仕事につきながらも、天皇の崩御後は世をはかなんで出家し、俗世とは縁を切ったはずでありながらも、完全に隠遁者になるには淋しすぎると吐露し、時には人と 交流して、たわいない噂話のやり取りを楽しむという彼の生活スタイルが、この作品に表れているようです。 俗世を捨てたことで、全てのしがらみから離れて、遠慮なく可笑しさや滑稽さを自由に笑えるようになったというのもあるでしょう。 隠遁生活者であるからこそ、俗世を諧謔的に眺める余裕が出ているのだとわかります。 京都内も、かなりあちこちの場所について語られています。 東国にまで出かけ、鶴岡八幡宮や金沢称名寺を訪ねているそうです。 当時の隆盛具合そして僧侶としての視点から、有名な大きな寺社だけでなく、聞いたこともないような寺院についても述べられているのが、京都の観光本を読み慣れた身には新鮮。 「猫また」の話の舞台となった行願寺(革堂)や五条天神宮、遍照宮など。 また、兼好は法然をかなり評価していたということも、読んだ当時は読み飛ばしていて気がつきませんでした。 法然ゆかりの地にも足を伸ばしているようです。 作中に登場する京都内のあちこちの寺社の写真や絵が多数掲載され、テキスト解読への理解を深めています。 とても興味深いテーマと内容ですが、あまり柔軟な印象とともに頭に入らなかったのは、現代語の解説に若干堅苦しさがあったからのように思います。 また、メインとなるのは、徒然草で語られている原文解読なのか、兼好の感性なのか、現在の京都の寺社の紹介なのか、よくわからないままだという感想を持ちました。 どれか一つに焦点を当て、それに付随する形で情報を付加していく構成にすると、より理解しやすい内容になったのではないでしょうか。 全く素性が分からないまま美貌とされる歌人小野小町。 兼好の生きた鎌倉時代にしてすでに、彼女はよくわからないミステリアスな存在だったそうなので、(それなら今はさらに謎は深まるばかりだろうな)と思いました。
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