児童文学のなかの障害者 の商品レビュー
やや内容が総花的で散漫になってしまうのは、あまりにも広いその対象を1冊にまとめるうえでは避けられないことであろう。 約1/3が戦前・戦中の廃兵=傷痍軍人を中心とした戦時体制下の作品に割かれている。また、戦後にしても「戦後」という状況下の作品を取り上げている以上、戦争にかかわる部...
やや内容が総花的で散漫になってしまうのは、あまりにも広いその対象を1冊にまとめるうえでは避けられないことであろう。 約1/3が戦前・戦中の廃兵=傷痍軍人を中心とした戦時体制下の作品に割かれている。また、戦後にしても「戦後」という状況下の作品を取り上げている以上、戦争にかかわる部分が半分近い。その部分については、『障害を持って帰還した兵士は戦死した兵士よりもずっと運がいい』ためにその傷害を訴えることができないという風潮の指摘に目から鱗が落ちた。 戦後の作品については、その経年的な変化の観察と作品の分類が中心となっている。障害者の登場する児童文学は年々増加している。もちろん表面的な部分しか描けていない作品もあるが、単に障害者問題を啓発するのとどまらず、障害者の内面に踏み込む試みもなされている。 そこで指摘されているのは『障害者といえど、それぞれがそれぞれの内面に葛藤をもち、一様ではない』ことへの配慮の必要性である。非障害者と相対化されることによって障害者がその程度や内容や環境にかかわらず『一様に』扱われる危険性の指摘である。ああ、ここでも『被災地』として一括されている福島の現状がオーバーラップしてしまう。
Posted by
この本は、児童文学を通して障害者と社会との関係を辿った児童文学史と言える。 児童文学の中には、様々な形で障害者が登場する。それは、作者の意図の有無に関わらず、作者の障害者観を反映している。そして、それは読み手である児童にも、知らず知らずのうちに刷り込まれていく。 その...
この本は、児童文学を通して障害者と社会との関係を辿った児童文学史と言える。 児童文学の中には、様々な形で障害者が登場する。それは、作者の意図の有無に関わらず、作者の障害者観を反映している。そして、それは読み手である児童にも、知らず知らずのうちに刷り込まれていく。 そのような観点で児童文学を読み返すと、意外な部分が見えてくる。自分自身を含めて、障害者に対する見方考え方を再検討するには興味深い本である。 ここで扱っているのは、 ヨハンナ・スピリ 「ハイジ」 ローラ・インガルス・ワイルダー「大草原の小さな家」 ロバート・ルイス・スティーブンソン「宝島」 小川未明「赤い蝋燭と人魚」 斉藤隆介「でいたらぼう」 川端康成「美しい旅」 壺井栄「二十四の瞳」 竹山道雄「ビルマの竪琴」 カルロ・コッロディ「ピノキオ」 灰谷健次郎「兎の眼」 宮川ひろ「春駒の歌」 槻野けい「生きていくこと」 等である。 私は作者の主張には賛成できない部分もかなりある。 しかし、この本に目を通し、彼らがどの部分を問題にしているかを知るのは価値ある事だと思う。
Posted by
- 1