松陰中納言 の商品レビュー
院政期から鎌倉に掛けて『源氏物語』を踏襲する形で乱筆された王朝物語…所謂、擬古物語に焦点を当て、一様に『源氏』のn番煎じと流す過去とは決別し、新たな見地から校訂と訳注がなされた、古典畑の人間にとっては随分と画期的な全集。 お陰で所収作品のマニアックさに、どうしても込み上げる笑...
院政期から鎌倉に掛けて『源氏物語』を踏襲する形で乱筆された王朝物語…所謂、擬古物語に焦点を当て、一様に『源氏』のn番煎じと流す過去とは決別し、新たな見地から校訂と訳注がなされた、古典畑の人間にとっては随分と画期的な全集。 お陰で所収作品のマニアックさに、どうしても込み上げる笑みを抑えられないw それはさておき、16巻は『松陰(まつかげ)中納言』(昔は「物語」まで入った題名で教わったなあ)が収録。 以下、粗筋。 ■帝から下賜された愛妾(藤の内侍)に横恋慕した山の井中納言の讒言で、松陰中納言が隠岐に流される ■須磨に籠った中将(松陰の息子)は、少将(山の井の息子)の助けを借りて継母の姦計を逃れた姫(山の井一党)と結婚 ■東宮の活躍などで、やがて山の井一味の悪事が露見し、一時凋落した松陰一門は逆に栄華を極める このように、松陰家の興亡を描きながら、無実の咎で流罪・継子虐め譚・生霊・入水・山の井一党の出家など、複数の要素が織り込まれた内容。ほぼ『源氏』踏襲じゃねえか、と思っても、そこは敢えて言わない。ほら、様式美ってあるじゃないか。だから、オリジナル要素の高い超二次創作とか言うなって!(身内談) 勿論、現代人として通常の感性を持っているならば「そもそも帝が悪い! 自分の愛妾くらい最後まで面倒見やがれ!」となるところだが、そこは時代の差なので我慢。 裏にどういう事情があろうとも、帝の愛妾を下賜されることは、臣下にとっては一種のステイタスだからなあ。 そのせいで、実際、我が国の歴史上で戦乱が巻き起こっているとしても、だ(苦笑) こんな泥沼の昼メロみたいな話が持て囃されたとは…基本的に日本人の嗜好って、いつの時代もそう大差はないのかもw
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