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ベトナム戦争の「戦後」 の商品レビュー

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2014/11/06
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※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 1975年サイゴン陥落以降の30年を総括したベトナム戦争論の決定版。第1部「ベトナムの戦後」、第2部「関連諸国――アメリカ、日本、中国、タイ、カンボジア、ラオス――にとってのベトナム戦争」。著者はいずれも気鋭の若手ベトナム研究者とジャーナリスト。ベトナム戦争世代の「思い入れ」を排除した斬新な切り口が特徴です。 [ 目次 ] 第1部 ベトナムの戦後(ベトナムの革命戦争;記者が見た英雄たちの戦後;統一ベトナムの苦悩―政治イデオロギーと経済・社会の現実;南部の貧困層と国際NGO活動に見る戦争の影響;ベトナム人民軍の素顔;人々の意識を荒廃させた経済・社会政策;抗米戦争と文学) 第2部 ベトナムの戦後と関係諸国(日本から見たベトナム戦争とその戦後;アメリカにとってのベトナム戦争―今も続く「泥沼の教訓」論争;周辺諸国にとってのベトナム戦争;ベトナム革命戦争と中国;国際共同体の一員として) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2013/01/12

ベトナム旅行の予習に読んだ本。しかし期待以上に中身の濃い本だった。 ベトナムと言うと、「ベトナム戦争」か、可愛い雑貨や美味しい食べ物のあふれる観光地。日本におけるこの認識ギャップを埋めるために、対アメリカ戦争(ベトナムにとって対アメリカ戦争は何十年も続いた一連の戦争のひとつにすぎ...

ベトナム旅行の予習に読んだ本。しかし期待以上に中身の濃い本だった。 ベトナムと言うと、「ベトナム戦争」か、可愛い雑貨や美味しい食べ物のあふれる観光地。日本におけるこの認識ギャップを埋めるために、対アメリカ戦争(ベトナムにとって対アメリカ戦争は何十年も続いた一連の戦争のひとつにすぎない)の後にベトナムがたどった路線と現状を知るための論集だ。大部で安くはない本だが、類書が非常に少ないなかで、たいへん貴重な資料といえる。非社会主義者らも含めた諸勢力による南部自決の構想をおしつぶしていった国家統一の過程、現在にまで遺恨を残すバオカップ制度、中ソ対立という条件下でとられた外交政策等、多くの基本的なことが学べる。 著者らがくりかえし戒めるのは、「大国を相手に勝利をかちとった、民衆たちの英雄の国」という理想化されたベトナムのイメージを勝手におしつけておいて、期待が裏切られたとがっかりするような態度だ。「ベトナム戦争」を通した日本におけるイメージ形成について、当時の反戦運動のありかたも含めて検証した渡部恵子の論文には、特に示唆を得るところが多かった。反戦運動は、日本の経済成長が戦争特需によって成り立っているという加害を意識してはいても、北爆は、まだ生々しい太平洋戦争中の空襲の記憶を刺激し、60年安保闘争をひきつぐかたちで、平和主義と反米ナショナリズムが組み合わさったものだった。それはどちらかといえば対アメリカとの関係に向いており、ベトナムに向いていたわけではなかったという指摘は、今日の反戦平和運動にもつながる問題提起を含んでいる。 さらに、「圧倒的な力をもつ米軍を打ち負かした正統な民衆の権力」という、海外の支援者にも共有されていた自己イメージのために、戦後の北部指導部が国内・対外政策を誤ることになったという指摘もされている。現代ベトナムを知るという目的以上の学びが得られた本だった。

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