阿部謹也自伝 の商品レビュー
今年記念すべき1冊目の本。また1月1冊目の本。阿部謹也という1人の歴史家の自伝。新年を迎えるにあたって、このような歴史家の考えと人生を読んで、良かったと思った。幼少時代・ドイツ留学時代・学長時代と主に分けられる。特に学長時代では、国公立大学の独立行政法人化などの問題や、教養とは何...
今年記念すべき1冊目の本。また1月1冊目の本。阿部謹也という1人の歴史家の自伝。新年を迎えるにあたって、このような歴史家の考えと人生を読んで、良かったと思った。幼少時代・ドイツ留学時代・学長時代と主に分けられる。特に学長時代では、国公立大学の独立行政法人化などの問題や、教養とは何か、といった問題に対して阿部氏の言葉は今でも影響力を持つのではないかと私は考える。
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阿部さんの本は『ハーメルンの笛吹き男』を読んだだけで、とりわけファンというわけでもなかったが、なんとなく気になって読んだ。自伝は本人しか書けない興味深い部分もあるが、本人がはばかって書けない部分もある。時代背景とか阿部さんの学会での客観的位置とか評価も今一伝わってこない。この点で...
阿部さんの本は『ハーメルンの笛吹き男』を読んだだけで、とりわけファンというわけでもなかったが、なんとなく気になって読んだ。自伝は本人しか書けない興味深い部分もあるが、本人がはばかって書けない部分もある。時代背景とか阿部さんの学会での客観的位置とか評価も今一伝わってこない。この点では海老坂武の未完の自伝が出色のできだ。 ヨーロッパ中世史というのは、ぴんとこない分野だが、阿部さんはそれを自分の行き方とのかかわりでやってきたようで、ここでは引用されていないが、石母田正が『歴史と民族の発見』の中でそんなことを言っていたのを思い出した。本人はさらりと書いているが、時折学会や交友関係での軋轢、生臭さも伝わってくる。それにしても、阿部さんが学長を勤めた一橋大というのは、増淵達夫や亀井孝といった錚々たるメンバーがいたが、内部での抗争のようなものもあったようで、一見ノンポリに見える阿部さんがよくそんな大学の学長を2期も勤めたものだと感心する。この人の人格なのか、あるいは意外に行政能力に長けていたのか。こんな評価も本人にはできまい。阿部さんが留学したゲッティンゲンはぼくも少しいたことがあるので、懐かしく感じた。
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