ムッシュー・テスト の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
自分自身とはこの自分だけを見つめていてもわかるものではなく、他者との関係性の中、具体的には他者との語らいや交流によって見えてくるものとぼくは思う。その意味でぼくはテスト氏に共感できず、むしろどこかよそよそしささえ感じる。だが、その「よそよそしさ」が同時に生々しくアクチュアルなものであり無視できないのはそんな感じで「自己」としか呼びようのないものが自分の中にあるという感触(そしてそれはどれだけ明察・分析を極めてもついに見極められないという絶望)が確実にあるからだ。実に明晰な文体がそうした自意識の不幸を伝える
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津村の読み直し世界文学の1冊。タイトルもわかりにくいが、内容も分かりにくい。解説を読んでもわかりにくい。これをどのように学生に薦めることが出来るか迷う。
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詩人の残したただ一冊の連作小説ですね。 作家の向かい合わせにしたようなムッシュー・テストを観察する文体で綴られています。 ヴァレリーは自身の内面的危機から内省的断片を書き連ねた一冊の帳面(カイエ)に帰結する。生涯に二万数千ページにもおよぶ神話的な(カイエ)から導きだされた小説との...
詩人の残したただ一冊の連作小説ですね。 作家の向かい合わせにしたようなムッシュー・テストを観察する文体で綴られています。 ヴァレリーは自身の内面的危機から内省的断片を書き連ねた一冊の帳面(カイエ)に帰結する。生涯に二万数千ページにもおよぶ神話的な(カイエ)から導きだされた小説との事でした。 詩人の詩人としての成功とは裏腹に、模索する内省のゆえに、難解な内容に成っています。とは言うものの訳者さんが苦心して読みやすく、訳注と解説がしっかりしているので、ヴァレリーと対話しているかのように読み進めました。 哲学的でもあり、詩的でもあり、恣意的な文章、会話、様々な断編の構成ですが、語られている事から得られるものは読み手しだいなのかな。
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ヴァレリーの序文が僕にとっての全てだった。中盤での「マダム・エミリー・テストの手紙」でエドモン・テストに溺愛する彼女の姿を投影して愛とはという命題を掴んだ気がした。中盤から最終部にかけて、アフォリズムが展開される。僕にとって難解な小説集だった。
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「出発が決まった途端に、まだ身体のほうはすこしも動きだしていないうちに、やがてまわりのすべてが一変すると考えるだけで、わたしたちの隠れたシステムに、あるふしぎな変更が通達されることになる。ここからやがて立ち去る、そう感じるだけで、まだ手で触れる一切のものが、いわばつい隣にあったそ...
「出発が決まった途端に、まだ身体のほうはすこしも動きだしていないうちに、やがてまわりのすべてが一変すると考えるだけで、わたしたちの隠れたシステムに、あるふしぎな変更が通達されることになる。ここからやがて立ち去る、そう感じるだけで、まだ手で触れる一切のものが、いわばつい隣にあったその実在性をほとんどたちまちのうちに失ってしまうのです。まるで、それらの現前性の能力が打ちのめされたとでもいうようで、能力のいくつかが消え失せてしまう。 昨日はまだ、きみはまだわたしのそばにいたのに、それでもわたしの内部には、もはやきみとは長いあいだ会うこともあるまいという気持にすっかりなっている秘密の人間がひとり生まれていた。すこし経てば、もうきみの姿は見あたらないというのに、わたしはきみと握手など交わしていたのです。そのときのきみは不在の色に染められ、まるで目前の未来などまったくもっていない身というふうに、わたしには見えた。すぐそばから見ていたきみが、遠くに見えたのです。きみの眼差は同じだったのに、もう持続を含んではいなかった。きみとわたしのあいだには、『ふたつの距離』があるかのように思えました、まだ感じとれぬ距離と、はや途方もないものとなっている距離のふたつが。そして、ふたつの距離のどちらをより現実的と見なすべきか、わたしにはわからなかった……」
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これを「小説」と呼んでよいものなのかどうか。 確かに、私小説のような一面はあるが、特に後半は詩のような連作のアフォリズムである。おそらく、その意味するところは、作者本人にしかわからないものなのであろう。 ただ、自分がこの世に在るとはどういうことなのか、この人間社会の中で何を意識し...
これを「小説」と呼んでよいものなのかどうか。 確かに、私小説のような一面はあるが、特に後半は詩のような連作のアフォリズムである。おそらく、その意味するところは、作者本人にしかわからないものなのであろう。 ただ、自分がこの世に在るとはどういうことなのか、この人間社会の中で何を意識して生きていくのかということについて、ともすれば過大になりそうな自己意識に光を当てつつ、真摯に自己と向き合おうとする作者の姿勢は伺えた。自分の読解力では、その辺りまでが限度である。
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吉田健一『書架記』を読んで購入。 ポール・ヴァレリー唯一の散文集。 小説と言われると小説なのだが、一般的に言われる『小説』とはまた違ったもののように思う。『散文』と言うのが自分的に一番ぴったりだった。 短い散文と断章からなる薄い文庫本ではあるが、妙に心に残る1冊だった。 うーん...
吉田健一『書架記』を読んで購入。 ポール・ヴァレリー唯一の散文集。 小説と言われると小説なのだが、一般的に言われる『小説』とはまた違ったもののように思う。『散文』と言うのが自分的に一番ぴったりだった。 短い散文と断章からなる薄い文庫本ではあるが、妙に心に残る1冊だった。 うーん、登録したと思っていたのだが、登録されていなかった……忘れていただけなのか? ダブってたら消そう……。
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【本の内容】 透明な知性と繊細な詩的感性によって20世紀前半のフランスを代表するヴァレリー。 その唯一の小説集『ムッシュー・テスト』の主人公はヴァレリーの分身として異様な〈頭脳〉の劇を生きた。 決定版の新訳! [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆...
【本の内容】 透明な知性と繊細な詩的感性によって20世紀前半のフランスを代表するヴァレリー。 その唯一の小説集『ムッシュー・テスト』の主人公はヴァレリーの分身として異様な〈頭脳〉の劇を生きた。 決定版の新訳! [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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これほど途方もない数の自尊心たちが、たがいに比べあっていると、温度がぐんぐん上がってゆく、そのありさまを考えてもみてください。おのれの運命に呼び招かれて気ちがいじみた職業に従事することになった華々しい不幸者たちの多くを、パリは、閉じこめ、結びあわせ、使い果たし、焼きつくす…
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逗子図書館にあり ほとんど意味がわからなかった… 精神分析書だろうか… ただ、途中、流れが変わったことだけは、わかった。
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