特攻漂流 の商品レビュー

安島太佳由(著者)

2017/08/15

　沖縄の海や、特攻隊の基地であった知覧上空や、海上の目印となった山の写真などが撮影されている写真集。
　特攻隊員の遺品の制帽や、恩賜の刀の鍔や、遺書や、特攻前夜に書いた寄せ書きなども載っている。あと、記念館の展示だと思われる遺影の数々。

　正直、これらの写真を見たことにより、特攻隊員たちの心情を慮れるかと言われれば、とても無理。あまりに何の感情も抱かなかったから、自分は冷たい人間なのかと考えこんでしまうところだった。

　戦争の悲劇を伝えるって、こういうことではないと思う。
　きれいな海と、雲と、鮮やかな花を見て、どうして特攻の悲劇を思い浮かべることができるというのだろう。

　思うに、特攻隊員たちを特攻隊員としてしか捉えていないから、こんな写真集になってしまうのだと思う。彼らは特攻隊員として人生を終えてしまったけれども、そうなる前の人生のほうが、はるかに彼らを彼らたらしめた意義あるものだったはずだ。

　そこが全く見えない。