アイヌ民族の軌跡 の商品レビュー
アイヌ、というと、北海道のイメージと、神謡集に代表される民俗学的な研究が強いけれど、本論はより広い視点で、サハリンから津軽まで、アイヌ民族に属する文化を持った集団がいた事、それがロシアや和人とどうつきあっていっていたかということに焦点をおいていて、非常に興味深かった。当たり前だけ...
アイヌ、というと、北海道のイメージと、神謡集に代表される民俗学的な研究が強いけれど、本論はより広い視点で、サハリンから津軽まで、アイヌ民族に属する文化を持った集団がいた事、それがロシアや和人とどうつきあっていっていたかということに焦点をおいていて、非常に興味深かった。当たり前だけれど、恥ずかしながら、「アイヌ」という人々にも、その歴史があり、列強と対峙してきたことを見落としていた。失われた、か弱い地方民族の一つとして見るのは偏見であり、筆者も指摘する通り、アジアの中の文化・歴史のひとつとして、より深い歴史研究が待たれる。
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図書館で借りた。 日本史リブレットシリーズから、アイヌ民族について。 最近では受験日本史でも北海道や琉球の歴史はしっかり習うと聞いたことがある。本書でも、稲作が広まらなかったから北海道には弥生時代が無く、縄文時代が3世紀頃まで続き、その後に鉄器が普及した続縄文時代と呼ばれる時代が...
図書館で借りた。 日本史リブレットシリーズから、アイヌ民族について。 最近では受験日本史でも北海道や琉球の歴史はしっかり習うと聞いたことがある。本書でも、稲作が広まらなかったから北海道には弥生時代が無く、縄文時代が3世紀頃まで続き、その後に鉄器が普及した続縄文時代と呼ばれる時代がある。さらには縄目模様が消えて擦文土器が使われる擦文時代が本州で言う戦国時代頃まで続いた…という流れ。 歴史の大枠はともかく、本書の文体が私にはキツく感じた。アイヌ民族は日本人ではない(…とは明記していないが、)のような言い回しがちょっと…。もちろん、歴史的に日本語を話さずアイヌ語を話していたアイヌ民族が居たのは事実だし、おそらくそこから和人による差別などもたくさんあったのだろう。(本書中にも、和語を強制するような歴史があったとのこと。)ただ、いわゆる和人と北海道で仲良く共存していた側面もあったはずだし、それによって現代は混じり合った(少なくともジェノサイド的に居なくなったわけではない)のだと理解している。 歴史学の学者センセイの界隈では普通なのかもしれないが、その辺の文体が少し相容れなかったかな。内容自体はとても勉強になりました。
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入門書として最適。 高校時代愛用していた山川出版の『詳説世界史研究』を彷彿とさせる。整理されていてわかりやすい。アイヌ側にも和人側にも偏ることなく、搾取の社会構造を論理的に説明している。
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初めて購入した山川出版社の「日本史リブレット」シリーズ。前回の読書日記にも書きましたが,最近北海道の歴史について勉強しています。私がこれまであまり触れてこなかった日本史ですが,身近な地理学でも多くの蓄積があり,なかなか刺激的な読書体験をしています。 特に注目しているのが「場所請負...
初めて購入した山川出版社の「日本史リブレット」シリーズ。前回の読書日記にも書きましたが,最近北海道の歴史について勉強しています。私がこれまであまり触れてこなかった日本史ですが,身近な地理学でも多くの蓄積があり,なかなか刺激的な読書体験をしています。 特に注目しているのが「場所請負制」という江戸時代の制度。私の場所論は卒論を発表した1993年の『人文地理』論文がはじまりですが,なんとその同じ号,私の論文の前に掲載されているのが,片上広子さんの「近世における石狩地域の動態——松浦武四郎日誌を中心に」という論文でした。タイトルだけでは分かりませんが,キーワードには「場所」が選ばれ,まさに「場所」という言葉が歴史上用いられていた事例を用い,ある人々(アイヌ民族)が和人(本土から来た日本人)に虐げられていたことを批判的に考察しています。松浦武四郎とはまさに,中南米のラス・カサスのように,その事態を告発するために現地へ調査しにいった人物とのこと。 まあ,ともかくそういう個々の研究論文をよりよく理解するためにも,本書のような短くて分かりやすく通史が学べる本は助かります。まずは目次。 アイヌ民族の今——民族と先住性 1 アイヌ文化 2 東北アジアのなかのアイヌ民族 3 アイヌ民族と近世日本 4 シャクシャインの蜂起 5 クナシリ・メナシの蜂起 6 民族文化の否定から「臣民」化へ アイヌ民族の軌跡 蝦夷について,アイヌについて知らないことばかりの連続でした。さまざまな図版や地図も掲載され,理解を助けます。特に本書では,目次の後半にも現れていますが,抑圧されたアイヌ民族たちの抵抗運動に多くページが割かれています。 先の日記で紹介した台湾映画『セデック・バレ』は時代的には下りますが,同じように日本という国が私利私欲による領土拡張でどのようなことをしてきたのか,よく知っておくべき史実です。
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アイヌの人たちがただ単に和人に搾取されていた可哀想な人たちではなく、(結果的には差別され民族のアイデンティティーを剥奪されてしまったのだけれど)和人とのやり取りの中でしたたかにたくましく自分たちの民族性を守ってきたことが分かった。そしてアイヌ民族に対する差別問題というより経済問題...
アイヌの人たちがただ単に和人に搾取されていた可哀想な人たちではなく、(結果的には差別され民族のアイデンティティーを剥奪されてしまったのだけれど)和人とのやり取りの中でしたたかにたくましく自分たちの民族性を守ってきたことが分かった。そしてアイヌ民族に対する差別問題というより経済問題としての側面に気付かされた。狩猟民族が徐々に組織化されて狩猟従事者になり経済社会の一員として取り込まれていくという流れは、一度動き出したら止めることはできなかったのだろうと思う。 結局、人と人との争いや、国家間の紛争などは、枝葉を取ってしまえば経済問題なのだと、思わされた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
アイヌ民族の軌跡を、日本からだけでなく、東北アジアの中で位置づけようとしている。 アイヌ民族と、東北アジアの他の民族との交流の中で、他のいくつかの先住民族と同様の、 記録が十分でない歴史を示唆している。 アイヌ民族について勉強しはじめる最初の1冊としては最適かもしれない。
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