狙われる美唇 の商品レビュー
趣向を凝らした設定と痛快な結末に驚き
夫が凌辱者の立場になるとはなかなか珍しく、実に面白い設定を考えたものである。つまりは、性豪かつドSな夫にいたぶり尽くされた妻がM性を開花させられたもののこれ以上はたくさん!とばかりに逃げ出す話なのだが、こうした関係に滲み出るDVなテイストや、こんな夫を刑事とすることで盛り込まれる...
夫が凌辱者の立場になるとはなかなか珍しく、実に面白い設定を考えたものである。つまりは、性豪かつドSな夫にいたぶり尽くされた妻がM性を開花させられたもののこれ以上はたくさん!とばかりに逃げ出す話なのだが、こうした関係に滲み出るDVなテイストや、こんな夫を刑事とすることで盛り込まれる警察組織の腐れ外道な一面にはかなりシニカルな含蓄を伴った風刺を見ることもできる。 若干のサスペンスっぽい色合いを覗かせながら逃亡を続ける妻が夫の策略によって次第に追い詰められていくのが話の骨子であり、その夫の策略は主に妻の友人・知人が次々と官能的な被害に遭っていく、そんな作品である。 渚:暴力的な夫【武満昭一郎】の妻 三十路前との表記から29歳と思われるが、冒頭から全裸緊縛の放置プレイを強要されており、現在から過去回想によって様々に弄ばれている序盤のメインヒロイン。国語の教師でもあり、下着レスな羞恥散歩の時に遭遇する【増尾】という教え子(中学生)が後々の伏線にもなっていく。 明日香:渚の後輩で副担任でもある音楽教師 武満の策略によって最初の毒牙にかかる25歳の女教師だが、無理強い一辺倒ではなく、優等生な増尾クンの「男の性」をも巧みに利用した手練手管に絡め取られるところは尋問上手な刑事の面目があったりする。 今日子:姉の渚を助けるべく動く聡明な25歳の大学院生 武満にとっては義妹でもあるためか力技と脅しで渋々屈服させている。凛とした気丈さのある今日子を辱めるには効果的な描写ということであろう。 由美子:渚の大学時代の友人でOL 割と始めからの登場ながら最後に狙われる一番の友人。渚の居場所を突き止めた武満の手駒として再び利用される増尾クンだが、中でも貞操観念がやや緩い印象の由美子は増尾クンの暴挙をいなしつつ若いツバメよろしく返り討ちに。これが武満の罠であるのと同時に増尾クンの筆下ろしにもなっているのは興味深い。そして、最後の締め括りとばかりに描かれる由美子への凌辱と、見つけられた渚をも交えた官能的なクライマックスはなかなかのものである。 女性陣の抵抗が少し弱くてあっさり陥落しているようにも写る勿体なさがあり、全体的にも淡白な官能描写ではあるが、果てることを知らない武満に延々と責められ続け、最後には失神してしまう描き方自体は悪くない。 しかし、ここに至る四面楚歌でシリアスな状況が一気に逆転する大どんでん返しが最後に待っている。 上には上が、しかもナナメ上にいたという大胆な切り返しは喝采であり、こんな展開があったのかという愉快なアイデアには舌を巻いてしまう。何よりこれまでの鬱憤が晴れる痛快さに声を出して笑ってしまうほどで、それだけ意外過ぎることが颯爽とした筆致で綴られているのである。この結末のために本作を執筆したのならば、褒め言葉として相当な喰わせ者の作者と申し上げねばならないだろう。最後にスカッとさせていただきありがとうである。
DSK
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